2024 年 62 巻 p. 43
本書は、2017年に出版され「新書大賞」を受賞した『バッタを倒しにアフリカへ』の続編である(評者による同書の紹介は本誌No.56参照)。前作から大幅にボリュームアップして10章からなる大作である。前作も楽しく読めたが、論文の発表前ということで学術的な面では若干曖昧なところもあった。しかし、今回は研究成果も論文で発表され、研究の背景から成果までふんだんに盛り込まれた、著者曰く「学術書」となっている。
本書では、2011年にモーリタニアで調査を始めてから現在にいたるまでの著者の研究生活、そして研究の進展状況が語られている。アフリカで大きな被害をもたらしているサバクトビバッタが研究対象である。モーリタニアでのサバクトビバッタの観察から生まれた繁殖行動についての疑問に始まり、その疑問がさらなる疑問を生んで発展していきながら論文として結実していくまでの経緯が語られている。先行研究の紹介もあってかなり専門的な記述もあるが、前作同様の軽妙な筆致は変わらず、楽しく読み進めることができる。
自らに足りない経験を補うためにメールでしかやりとりをしたことの無いアメリカの研究者の懐に飛び込み(第3章)、実験設備をもとめてモロッコ(第5章)やフランス(第6章)へと居を移す。なぜこれらの国々に行くのかを、各章の初めに研究の観点から丁寧に説明していて、それによって研究が前進していることを感じることができる。
随所に書き込まれている、著者の研究に関して思いめぐらす過程や研究者としての不安なども本書の特色であり、著者を応援する気持ちとともに読み進んでいける。なお、前作でもほぼ全編を通して登場していたモーリタニアでの相棒であるドライバー、ティジャニにも一章がさかれている(第7章)。著者は、ティジャニのビジネス立ち上げや家建設のために支援するのだが、なかなかうまく行かない話は苦笑いと共にフィールドワーカーの評者としては共感を覚えてしまう。
第9章では、東アフリカでのサバクトビバッタの大量発生とほぼ同時に起きた新型コロナウイルス感染拡大に対して、FAOによる防除対策や著者の友人でもあるバッタの研究者たちが直面した状況を紹介している。また、著者自身は当時の渡航制限のために現地には行けなかったのだが、日本でメディア対応に振り回されることになった様子も書き込まれている。
内容は盛りだくさんだが、サバクトビバッタの研究の面白さや奥深さを広く伝えたいという熱意が全編にあふれている。続編ではあるものの、本作から読んでも十分楽しめる内容である。
児玉 由佳(こだま・ゆか/アジア経済研究所)