本稿の目的は、ボツワナ共和国で2022年に起こされた埋葬裁判と、2024年の総選挙(国民議会および地方議会選挙)をめぐる再定住地のサンの反応を考察することを通じて、彼らの日常におけるわだかまりが、土地問題などの政治的な意見に変化しつつあることを明らかにすることである。ボツワナ共和国ではこれまで、長年にわたり政府とサン活動家が土地の権利をめぐって争ってきた。それは、再定住地におけるごく一部のサン活動家と彼らを支援する国際的な先住民支援団体によって争われ、再定住地におけるサンの多くは周囲から静かに見守るのみであった。しかし、あるサン活動家が埋葬場所をめぐって起こした裁判と選挙への立候補によって、土地問題をどこか自分事としては捉えていなかった再定住地のサンの人々も、日々の生活のなかにおける不満と重ね合わせるかたちで政治的な意見を持ち始めた。本稿では、再定住地におけるサンに注目し、より人々を土地問題の議論に巻き込むことになった背景と人々の意識の変化を、近年の埋葬裁判と選挙から論じる。