抄録
バングラデシュシャムタ村のボーリングコア試料を顕微鏡,SEM,EPMA及びTEM等を用い鉱物学的に検討し,記載し,鉱物中のヒ素の含有量をしらべた.堆積物中の主要な構成鉱物は石英(quartz),雲母(mica),長石類(feldspars),緑泥石(chlorite),角閃石(amphibole)であった.それらの存在量(比)は深度によってあまり変化しない.粘土鉱物は雲母粘土鉱物(mica clay mineral),緑泥石(chlorite)カオリン鉱物(kaolin minerals),スメクタイト(smectite)がみられた.双眼実体-偏光顕微鏡下で,ざくろ石(almandine),方解石(calcite),苦灰石(dolomite),単斜輝石(clinopyroxene: augite/diopside),斜方輝石(orthopyroxene),磁鉄鉱(magnetite),イルメナイト(ilmenite),黄玉(topaz),ジルコン(zircon),電気石(tourmaline),黄鉄鉱(pyrite),チタン酸化鉱物等が見いだされた.黄鉄鉱,とくにフランボイダル黄鉄鉱,その前駆鉱物,鉄(水)酸化鉱物にヒ素を含んでいることがわかった.含有量はこの順に低くなる.他の可能なヒ素の起源として,木片等の有機物からもヒ素の含有が推定された.これら基礎的データは溶出メカニズムを推定する重要な手がかりとなる.地下水の化学的データなどを参考にしてヒ素の地下水中への溶出について考察した.