抄録
岐阜県多治見市小名田に分布する中新統土岐口陶土層と,そこから産出する大型植物化石を対象に,植物片の運搬・堆積過程を堆積相との関連の観点から明らかにした.対象層では,土石流相,河道埋積相,土砂流相,洪水流相,沼沢地相(2相),後背湿地相の7堆積相を認めることができ,山地丘陵部が沼沢地・湿地に近接した網状河川システムを復元した.植物化石は,このうち4堆積相から得ることができた.土石流相には,越年によって落下後陸上で朽ちたとみられるPinus fujiiiの球果が産出するが,この球果自体は粒子分散圧支持で運搬・堆積した.洪水流相には,植物葉やFagusの殻斗のように浮遊・沈降して運搬・堆積する植物片と,ベッドロードとして堆積するものが存在する.大型植物化石の分類群の偏在から判断して,植物化石の運搬距離は極めて短い可能性もある.