地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
原著論文
北部フォッサマグナ新第三紀深成岩類の地球化学的多様性
川野 良信
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2017 年 71 巻 2 号 p. 75-86

詳細
抄録

北部フォッサマグナには新第三紀に活動した深成岩類が広く分布している.これら深成岩類には,南西部の美ヶ原-霧ヶ峰地域から,須坂-上田地域を経て,巻機-谷川地域にかけて帯状に配列し,南西部から北東部へ向かうに連れ活動時期が若くなる傾向が認められる.深成岩類は主としてトーナル岩や花崗閃緑岩からなり,部分的に花崗岩を伴う.美ヶ原-霧ヶ峰地域の深成岩類は,巻機-谷川地域のそれらよりも高いSr,Nb,ΣLREE/ ΣHREE,La N /Yb N を示し,須坂-上田地域の岩石は両方の性質をもっている.このことから部分溶融程度は美ヶ原-霧ヶ峰地域で小さく,巻機-谷川地域で相対的に大きかったと推定される.また,Sr 同位体比初生値はSn 含有量と正の相関を示し,起源マグマが地殻物質と反応したことを示唆している.εSrI –εNdI 図では,美ヶ原-霧ヶ峰・須坂-上田両地域の深成岩類は伊豆弧火山岩類とハンレイ岩質捕獲岩との間の領域を占め,巻機-谷川地域の岩石は大陸地殻物質と反応した,あるいは下部地殻物質を起源とする東北日本の新第三紀火山岩類と同じ変化傾向を示した.これらの結果から,伊豆弧火山岩類を形成した起源マグマが主としてハンレイ岩質岩, あるいはハンレイ岩質岩由来のマグマの影響を被って美ヶ原-霧ヶ峰・須坂-上田両地域の深成岩類を,それが大陸地殻あるいは下部地殻物質の影響を被って巻機-谷川地域の深成岩類をそれぞれ形成したと考えられる.

著者関連情報
© 2017 地学団体研究会
前の記事
feedback
Top