地球科学
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原著論文
宍道湖に発生した大型沈水植物へのマンガンの濃縮
石賀 裕明
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2020 年 74 巻 4 号 p. 109-118

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抄録

西南日本の汽水湖である宍道湖において,大型沈水植物のオオササエビモ(Potamogeton anguillanus Koidz)が2009 年から湖岸,特に南岸で段階的に再生を始めた.様々な水環境においてこのような植物は重金属イオンを吸収または吸着することが知られている.この生体濃縮を調べるために,2010 年から2012 にかけて湖岸の数ヶ所で採取したオオササエビモ試料の重金属濃度をXRF により測定した.その結果,高いMn 含有量が茎や葉身(葉)で認められ,特に葉の含有量は非常に高い.そのMn 含有量は2012 年では夏季に向けて高くなることが明らかとなった.一方,オオササエビモの葉の表面のSEM による観察では付着生物(藻類,珪藻類,甲殻類など)が多数見られる.今回のMn 含有量の測定はオオササエビモの茎と葉とこれらの付着生物の全体を測定したものである.2012 年のSS(浮遊物質)のMn 含有率も5 月から8 月にかけて急速に増加する.これらのことは,夏季に流入する塩水により発生する還元的な底層水中に底質から溶出したMn 2+ が,その後の底層水の湖風による湖岸への移動に伴い,オオササエビモに吸着・吸収(濃縮)された結果であると考えられる.なお,宍道湖における上記過程におけるFe の挙動はMn とは異なることも今回判明した.

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