2021 年 75 巻 3 号 p. 217-229
西南北海道北斗市に分布する第四系富川層の珪藻化石層序を検討した.その結果,本層において認定し得る珪藻化石帯は下位から Neodenticula koizmii帯,Actinocyclus oculatus帯,そしてProboscia curvirostris帯の3帯であり,その地質年代は最大で2.43から0.3Maにわたることが明らかになった.本層下部の1層準からは, CN13a帯(1.93-1.71 Ma)を示す石灰質ナンノプランクトン化石群集が得られており,両者は調和的である.岩相および軟体動物化石群集間の対比によって,本層は伝統的に瀬棚層相当と考えられてきたが,本論によれば,本層の下限は瀬棚層とは一致せず遡る可能性がある.また,富川層の上半部層準からは海氷関連珪藻種群が多産し,非常に寒冷な沿岸水の影響を強く示唆する.