2022 年 76 巻 1 号 p. 19-29
本論文は,秩父堆積盆地の中新統基底部の不整合面付近に観察される古地形・地質の特徴が古岩礁海岸を示すものではないかという観点で,詳細な地質調査とともに,砕屑物の粒度・円磨度の調査も加えて,これらについて記載し議論したものである.
堆積盆地北東部の野巻西部(桜ヶ谷)で観察され不整合面に保存されている古地形のうち,上位と下位の2段の平坦面は海食台であり,上位の平坦面上にみられる凹みはポットホール,また,2段の平坦面の境界にみられるオーバーハングした斜面はノッチであると判断される.これらの海食台は,下位の方がより新規で,上位の平坦面は浸食され崩壊しつつある段階にあるととらえることができる.
これらの古地形をふくめて,秩父堆積盆地発生初期(前期中新世)の野巻付近に復元される海岸は,岩礁海岸の基準をほぼ満たすものであり,古岩礁海岸である可能性が高いと判断される.