2022 年 76 巻 4 号 p. 207-220
長野盆地は,北部フォッサマグナ地域における第四紀内陸盆地の一つであり,盆地の西側に沿って延びる長野盆地西縁断層帯の活動による沈降が継続している.長野盆地には,千曲川や犀川などの大河川や中小の河川が大量の砕屑性堆積物を供給し,流域の各所に自然堤防や後背湿地を有する低平地と扇状地を形成した.本論では,長野盆地における約1,900本余りのボーリング資料をもとに地質断面図を作成し,自然堤防や後背湿地を形成した氾濫原堆積物の性状と分布について述べた.氾濫原堆積物は,粘性土層,有機質土層および砂質土層からなる.このうち,粘性土層と有機質土層は,おもに長野盆地西縁断層帯による沈降の影響を強く受けた盆地の西縁部や延徳低地に厚く分布する.一方,砂質土層は,千曲川と岡田川の流域および扇状地の表層に分布する.氾濫原堆積物のうち,標準貫入試験によるN値が4程度以下の粘性土層および有機質土層とN値が10程度以下の砂質土層を軟弱地盤に区分して等層厚線図を作成した.さらに,1847年善光寺地震とそれ以降に発生した長野盆地を震源とするマグニチュード6程度の2つの地震(1897年上高井地震,1941年長沼地震)について,揺れによる家屋などの被害箇所と液状化の発生個所を抽出し,それらの分布がおおむね軟弱地盤の分布域に重なることを示した.