東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
韓国漁業養殖業制度,政策の変遷と課題
日本の漁業制度との比較
小松 正之
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2019 年 30 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

日露戦争後の1905年に韓国統監府が設置され,1908年11月には旧明治漁業法に基づく「朝鮮漁業法」が制定された。1910年の韓国併合を経て,1911年に日本と韓国は明治漁業法の同一の漁業法体系を保有することとなった。その後,韓国は朝鮮戦争の混乱で諸制度の整備が遅れ,日本はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の下で戦後の民主化政策がすすめられ,それぞれの法体系に変化が見られた。 韓国の漁業は,1960年代からの国を挙げての工業化政策にのっとり,生産量の増加がみられた。韓国の沿近海漁業(日本の「沿岸・沖合漁業」に相当)は,1980年代半ばから,沿岸漁業と近海漁業の対立,主要資源の減少と漁場の遠隔地化が進んで,漁船の大型化と機械化に向かい,さらに沿岸と沖合の区別がなかったことから,沿岸域での漁場の資源状況とそれをめぐる紛争は一段と悪化した。 日本の漁業生産量は,1974~88年までは1,000万t以上(1984年には1,282万t)を記録し,世界一の漁業生産量を誇ったが,それ以降凋落した。その原因の大部分は,自国200カイリ排他的経済水域内での漁獲の減少である。 世界では1982年に国連海洋法条約が署名され,1994年にはこれが60ヵ国の批准を経て,発効するに至った。日本は1996年6月に,韓国は日本に先立ち1996年1月にそれぞれ批准した。 日本はTAC(総漁獲可能量)制度を1997年に導入した。韓国は1999年から導入したが,同時にIQ(個別漁獲割当量)制度を導入した。tAC魚種数でも韓国が上回る。韓国の漁業生産量は,1980年の日本の約20%から80%の水準まで追いついた。これは日本の漁獲量の減少と韓国の養殖業生産量の増大が主たる要因である。水産政策にも差がみられる。内向きで過去にこだわる日本と外向きで未来志向の韓国である。本稿では,何が日韓の漁業と養殖業の差をもたらしたかを見ていきたい。

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© 2019 公益財団法人 アジア成長研究所
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