The Annals of physiological anthropology
Print ISSN : 0287-8429
蛋白質代謝および運動能力に及ぼす急速減量の食組成の影響
森田 恭光井川 正治高橋 弘彦富田 耕太郎広田 公一
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1991 年 10 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

本研究は, 大学ボクシング選手を被検者として, 経験的な減量食による自由摂取 (A群), 栄養指導により, 蛋白質を前半2.0g/kg/day, 後半1.5g/kg/day摂取させた高蛋白食 (B群), 減量期間中1.0g/kg/dayの蛋白質を摂取させた普通蛋白食 (C群) の3種類の減量食による減量を行った際の, 減量時における体内蛋白質代謝, 特に筋蛋白の動態及びこれらが運動能力に及ぼす影響について比較検討し, 急速減量時における体蛋白, 特に筋蛋白の損失を防ぎ得るための望ましい蛋白質摂取量を得る目的で実施した.
1) 摂取エネルギー量及び蛋白質摂取量は, B, C群ともにほぼ計画通りであった.A群は, 後半摂取エネルギー量, 蛋白質摂取量共に, 減量時の最低必要量 (1200kcal/day, 1.0g/kg/day) 以下であった.
2) 体重は, A群平均5.5kg (9.0%), B群平均5.2kg (8.4%), C群平均5.3kg (8.6%) の減少であった.体脂肪量は, それぞれ顕著に低下した.
3) 尿中Crは, 減量期間を通して大きな変化はみられなかった.但し, A群では終了日減少傾向にあった.尿中3-Me, 尿素窒素及び窒素出納は, 3群とも減量前に比較し減量中間日に顕著に減少した.減量中間日から終了日にかけてA群の3-Me, 尿素窒素は著しい増加を示した.B, C群は, 各項目とも顕著な減少がみられた.窒素出納は, A群のみ負の出納を示した.
4) 全身持久性能力は, A群が著しい低下を示した.他の2群には大きな変化がみられなかった.筋力は, 3群とも減量の影響を受けなかった.このように, 現在各選手が行っている経験的な減量食による減量は, 全身持久性が低下し, 体蛋白および筋蛋白の損失が見られることからこのような減量食は改善される必要があると考えられる.減量時に見られる筋蛋白を含む体蛋白の損失を防止し, 運動能力を維持するために, 競技者は, 減量時において摂取エネルギー量を1200kcal/day, 蛋白質量を1.5g/kg/day以上維持することが望ましいと推論した.

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© 日本生理人類学会
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