2006 年 71 巻 606 号 p. 9-16
本稿はタイにおけるショップハウスの成立と変容に関する一連の研究の一環である。これまで、バンコクのラックナコシン地区におけるショップハウスの導入とその変容過程、また類型について全容を明らかにしてきた。バンコクのショップハウスはシンガポールのモデルを導入したのであるが、タイには他にいくつかの類型が存在する。そのひとつが華人(チャイニーズ)が直接移入したケースである。続いて、古くからの港町であるパタニを調査対象とし、別の類型を明らかにした。その形式はバンコクのケースと全く異なり、細長い敷地をとる例えばマラッカのものに近い。そして、増改築のパターンもバンコクのものとは異なっている。本稿では、タイの運河沿いの市場町に注目してさらに第三の類型として、もう一つのショップハウスの類型をタラート・クロンスウォンについて明らかにした。木造であり、タイにおけるショップハウスとして、他にも多く見られる。いずれも、チャイニーズによって導入されたものであるが、その典型である。前稿同様、さらにその空間構成の変化についても分析・考察した。