農業情報研究
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原著論文
卸売市場における価格決定方式とその価格効率性
―東京都中央卸売市場を事例とする―
崔 炳玉永木 正和
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2006 年 15 巻 2 号 p. 91-102

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抄録

卸売市場の価格決定方法は, 従来のセリ方式にかわって, 相対方式が増大している. 近年の川下の流通環境の変化に対応するものであるが, こうした卸売市場における形成価格が変遷する中, 現在の卸売市場の価格がさまざまな取引形態に対して適切な指標価格として機能しているかどうかを検証してみる必要がある. そこで本研究は, 東京都中央卸売市場の9卸売市場における主要野菜品目の卸売市場平均価格に関する「価格効率性」を, Fama (1976) の弱度効率性仮説に基づいて, 時系列分析法の援用によって計量的に検証する. 分析期間は1989年から2002年までの14年間で, 卸売市場の価格決定方式が大きく変遷した2期に区分して, 価格効率性の比較分析を行った. 分析手順は, Engle and Granger (1987) が提示した2段階推定手続きによる.
分析結果によると, 相対取引がかなり伸長した現在の東京都中央卸売市場は, 入荷量変動に起因して短期には価格変動を起こしているが, 長期均衡の観点からは, 外的ショックを回復させようとする価格挙動が統計的に確認され, 以前よりも価格安定指向を強めていた. また, その結果でもあるが, 東京都内の中央卸売市場間の, いわば空間的価格格差も縮小していた. 時系列的にも, 空間的にも価格均衡を指向する作用が機能していて, 現在の卸売市場価格は効率的であると結論づけた.

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© 2006 農業情報学会
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