抄録
三重県紀州地域では,園地の環境条件をリアルタイムで計測する農業用小型計測ロボット「フィールドサーバ」と,気象条件の影響を最小限に抑えた品質制御が可能な「マルドリ方式」が導入される中で,温州ミカンの水分ストレス指標を得るためには,ミカン園における気象計測とともに,土壌とミカン樹体の水分状態把握が極めて重要なことが示された.そこで,計測データに基づいた実用的なミカンの生育診断技術を完成させるため,土壌水分およびミカン樹体の水分ストレス情報を定期的に手動で測定する方法を確立するとともに,土壌水分及び樹体情報と果実品質等を調査し,実際の生産現場における診断指標としての有用性を検討した.土壌水分と樹体水分の計測にはTDR計を使用した.また,土壌水分センサWatermarkの設置方法を作り上げるとともに,TDR土壌水分測定法との比較を行った.その結果,Watermarkでもミカン園の土壌水分を連続測定可能なことが実証できたが,乾燥時の少量多回数かん水の把握は困難であることも判明した.また,土壌水分と樹体水分の計測にTDR計を用いることで,温州ミカンの水分ストレス状態を的確に把握出来ることを実証した.