農業情報研究
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原著論文
大規模稲作経営における技術・技能向上および規模拡大のコスト低減効果―FAPS-DBを用いたシミュレーション分析―
松倉 誠一南石 晃明藤井 吉隆佐藤 正衛長命 洋佑宮住 昌志
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2015 年 24 巻 2 号 p. 35-45

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抄録

我が国の稲作が抱える主な問題として,小規模で高生産コストである点がしばしば指摘される.そこで本稿では,作業者の技術・技能向上および経営規模拡大が稲作経営の生産コスト低減に及ぼす効果について定量的に明らかにする.具体的には,実際の大型機械化体系による大規模稲作経営のデータを参考に,農業技術体系データベースを用いた営農支援システムFAPS-DBによるシミュレーション分析を行った.その結果,対象経営と同程度の作付面積(150 ha)と作業効率を想定した場合には,生産コストは50 ha規模の88%程度であることが明らかになった.また,作業効率が生産コストに及ぼす影響を分析するため,作業者が全員初心者である場合と,作業者が全員熟練者である場合の作業効率をそれぞれ想定したシナリオごとのシミュレーション分析結果の比較検討を行った.その結果,前者の場合には,生産コストは50 ha規模の94%に留まるが,後者の場合には87%程度であることが明らかになった.これは,作業者の熟練による作業効率の向上は,固定費および労賃の低減に効果的であり,作業者の技術・技能向上による生産コスト低減効果は大きいことを示している.さらに,これらのシミュレーション結果の比較から,作業効率が向上することによって,経営面積の拡大が生産コスト低減に与える影響は大きくなることが明らかになった.このことは,稲作経営が経営面積規模拡大による生産コスト低減を効果的に達成するためには,経営内能力養成および農業政策の両面において,熟練技術・技能を有する農業人材育成が重要であることを示唆している.

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© 2015 農業情報学会
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