日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会春季学術大会
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地震に対するハザードマップ
*熊木 洋太
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p. 000013

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抄録

地震・地震災害とハザードマップ ハザードマップは,災害に対する自然的または社会的特性に基づいて土地を区分・評価することによって,災害の危険性の地理的分布を示すものである。多くの場合,地方行政や地域社会や個人の行動に役立てるためのものであるので,それに適した空間解像度で表現される必要がある。 地震は地下の断層活動により発生するが,災害の大部分は,その現象自体ではなく,地表での強震動により発生するから,地震発生源の場所を示しただけでは,十分なハザードマップとは言えず,強震動を受ける場所を示す必要がある。しかし一つの地震で生じる強震動はきわめて広範囲に及び,かつ土地の特性に強くは規制されないから,一定以上の強震動を受ける可能性のある場所を示しただけでは,日本では期待される空間解像度から見て十分ではない。河川氾濫や地すべりなどは,現象自体が災害であり,かつある程度限定された場所で発生するから,その発生場所を示すことで適度な空間解像度のハザードマップとなり得るが,地震災害を対象としたハザードマップの場合は,このように異なる困難さがある。確率による地震動予測地図 実際に地方公共団体で作成されている地震ハザードマップは,多くの場合,地域防災計画策定に必要な被害予測の一環として作成されたものである。この場合,大きな被害をもたらす具体的な地震を少数個あらかじめ想定して行うが,このシナリオ地震以外にその地域にとって現在発生確率の高い地震がある可能性があり,そのような地震が防災意識外に置かれてしまうおそれがある。 一方,国の地震調査研究推進本部では,地震防災対策特別措置法の規定によって立案された「地震に関する観測,測量,調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策」において,推進すべき課題として全国の確率的な地震動(強震動)予測地図の作成を取り上げている。これは,あらゆる地震を対象として,現在からのある期間内に,ある強さ以上の地震動が,どのような確率で発生するか,の3要素のうち2要素を与えて,残りの1要素の地理的分布を出力するものである。同本部では平成16年度中に全国を概観するものを作成する方針であり,地震調査委員会が長期評価の一環として作業を進め,すでに地域を限定した試作図が公開されている。同様のものはUSGSが米国を対象に作成しており,ウェブで公開されている。 この図の作成では,プレート境界や活断層で発生する固有地震については,これまで諸研究成果から平均再来間隔と最新活動時期を求めて一定期間内の発生確率を計算し,また震源断層面の位置・形状及び1回の地震時のスリップベクトルを推定して全国各地点の強震動の強さ(震度,加速度等)を計算する。震源をあらかじめ特定できない地震や固有地震とは言えない地震については,現在までの観測結果とグーテンベルグ・リヒター式から地震発生頻度(確率)を算出する。技術的な課題は多いが,完成すれば再来間隔の短いプレート間地震と再来間隔の長い活断層の地震,さらに繰り返し性の不明な地震まで含めて,統一的な評価による相対的危険地域が明らかにされ,防災対策上の効果は大きいであろう。地震動以外の現象に対するハザードマップ 地震の場合は,地下の断層活動がもたらした地表の変位や,津波・液状化・斜面崩壊,あるいは火災などの二次的に発生する現象も大きな災害要因となるから,強震動だけでなく,これらの現象を対象としたハザードマップも重要である。国土庁・建設省は液状化マップの作成マニュアルを示しており,最近では津波のシミュレーションが多く行われている。1999年の台湾集集地震で注目された地表の断層変位については,米国カリフォルニア州の活断層法に基づく地震断層帯地図が一種のハザードマップと言えなくもないが,今後の課題である。

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