日本地理学会発表要旨集
2003年度日本地理学会春季学術大会
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都市化に伴う台地の湧水水質の変化
*寺園 淳子
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p. 000027

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抄録

1.はじめに
近年大都市近郊においては,都市圏の拡大に伴う土地改変により台地・丘陵地の水環境の劣化を招いている.対する根本的な解決策や人間活動のあり方を考える際に,人間活動の蓄積による水質変化に関する系統的理解が必要となる.
本研究は,首都圏近郊の台地における地表面の面源負荷による湧水水質の実態について,明らかにした.

2.調査地域
研究対象地域は近年の都市化によって台地上で大幅な土地利用変化が生じている千葉県の下総台地北西部である.
本地域は標高15~30mの台地面と樹枝状に入る谷の沖積低地(標高2~9m)からなり,両者は急斜面で接する.台地面は,北部は下総下位面,南部は下総上位面に区分され(杉原1970),緩く北方へ傾く.上位面と下位面の標高差は3~5mほどであり緩斜面で接する.三谷・下総台地研究グループ(1996)が指摘する坂川‐手賀沼構造帯も地域内に存在する.
湧水は上記の谷沿いに見られるが,湧水地点の高度および台地面との比高は多様である.台地の地層は下位より上岩橋層・木下層・常総粘土層(北部では中位~下位に龍ヶ崎砂層が分布)・武蔵野/立川ローム層となり,湧水の帯水層は武蔵野ローム層下部,龍ヶ崎砂層,木下層上部砂層である.

3.調査方法
採水・水質分析
台地上の土地利用が多様でかつ空間的に均質になるように66地点で湧水を採水し(2002年7月),そのうち22地点に関して1ヶ月に1回の頻度で(2002年5~8月)採水した.採水時に水温・EC・pHとpH4.8アルカリ度を,実験室でNa+・K+・Ca2+・Mg2+・Cl-・NO3-・SO42-の主要無機イオン濃度およびSiO2濃度を測定した.
地質・集水域土地利用解析
都市計画基本図と地形図から湧水地点の標高,台地面との比高を計測した.また,過去の地形図から各湧水の地形的分水界を設定し,国土地理院(1994)発行の細密数値情報(10mメッシュ土地利用)を用いて集水域土地利用を解析した.

4.結果と考察
地下水流下によって与えられる水質
比高が増加するにしたがって各水質項目の増加傾向があり(Fig.1),比高と集水域土地利用構成の関係に特別な傾向はないことから,地下水の流下に伴う水質の付加効果が考えられた.この水質は基底水質と呼ぶことができる.
Fig.1 湧水地点における台地面との比高と電気伝導度の関係

集水域土地利用によって与えられる水質
各湧水について計算された上記の基底水質を除いた値を地質以外からの付加水質と捉えると,特徴的な集水域土地利用との間に一定の対応関係が見出された(Fig.2).
Fig.2土地利用類型と付加水質との対応関係

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© 2003 公益社団法人 日本地理学会
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