日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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中国農村に継起する3つの変化とその多様性
*小島 泰雄
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p. 47

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抄録

改革開放政策の起点を1978年とすると、すでに四半世紀にわたって、社会主義的な国家建設から市場経済へと、中国の進路が転換されてきたことになる。この間、急速な変化をとげる中国にあって、農村もまた例外ではなかった。その変化を継起する3つの段階に整理し、それぞれの局面における諸関係の中に、共通テーマであるグローバリゼーションの影響とその機制を考えてゆくことが、本報告の目的である。あわせて、これらの変化に内在する多様性について、地域の視点から考えてゆきたい。 中国におけるこの四半世紀の農村変化をその空間性に着目して再度、眺めてみよう。近代国家を社会主義建設により創りだそうとしてきた中国にあって、いまもなお農村変化に国家の枠組みが強力に影響していることは、制度やその施行状況から明らかであろう。1980年代には一旦、農業生産と郷鎮企業の発展を通して地方が立ち上がってきたかに見えた。しかし、1990年代に入ると世界を指向した市場経済化が加速され、出稼ぎに象徴される移動を伴う変化が上書きされた。農村の変化は明らかに均一な歩みから多様な駆け足へと変わり、それは国家的要素の後退と、それと連動する地方と世界の空間性の強まりとして理解されよう。しかし、この変化の方向性は一定でなく、地域的多様性を有し、かつ可塑的でもある。その中で農村そのものの衰退が着実に進行していると言えよう。

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