日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会春季学術大会
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栃木県北部,日光火山群女峰赤薙火山で約12-15万年前に起きた大規模山体崩壊
*橘 英彰
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p. 187

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抄録

1.研究の目的
栃木県北部,日光火山群女峰赤薙火山は日光火山群の中では最も東に位置する成層火山である(山崎,1958).女峰赤薙火山の活動史・地形発達史については,テフラ層序との関係から約30-8万年前にいたる爆発的噴火活動史(村本,1992,鈴木ほか,1994,鈴木ほか,1998)が提案されている.また火山体の溶岩層序と溶岩のK-Ar年代値からは,約50-40万年前に渡る活動史も提案されている(佐々木,1994).本稿では女峰赤薙火山の地形発達史の一部を考察する.佐々木(1994MS)が女峰赤薙火山における最新のイベントとした行川岩屑なだれ堆積物のほか,丁字沢岩屑なだれ堆積物(佐々木,1994MS),所野岩屑なだれ堆積物(新称),稲荷川岩屑なだれ堆積物(新称)とした,火山の南東麓における4グループの岩屑なだれ堆積物の分布およびテフラ層序との関係を調査した.
2.調査結果
山体崩壊によって形成された馬蹄形地形は,ほとんどが山頂の溶岩円頂丘群の下位に埋没していると想定されるが,稲荷川西岸斜面の急崖を山体崩壊の馬蹄形地形の一部であると認めることができる.各岩屑なだれ堆積物は,分布状況と層序についていくつか共通する点が認められるので,これらはすべて一度の大規模山体崩壊によって供給されたと考えることができる.地表に露出する堆積物の分布総面積は27.92km2,総体積は少なくとも0.79km3である.給源から分布の末端までの比高Hと流走距離Lの比H/Lは0.09である.行川岩屑なだれ堆積物は御岳第1テフラ(100ka:町田・新井,2003)と,田頭テフラ(125-135ka:鈴木,1999)の直下にある矢板テフラに覆われ,飯綱上樽aテフラ(120-150ka:鈴木,2002)とよく似る特徴を持つテフラを覆うことから,女峰赤薙火山の南東方向への山体崩壊は約12-15万年前に発生したと考えられる.
この山体崩壊が新しいマグマ活動によるものかは今のところ不明であるが,稲荷川岩屑なだれ堆積物の上位に複数の火砕流・溶岩流堆積物が認められることから,山体崩壊発生後,すなわち約12-15万年前以降にも女峰赤薙火山は火山活動が続いていることが認められた.

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