日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会春季学術大会
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ナミビアにおけるサバンナ植生景観の支配要因
*沖津 進
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p. 2

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抄録

 本報告では,アフリカ南西部の乾燥,半乾燥地帯に位置するナミビア共和国内で,降水傾度に沿ったサバンナ植生景観の変化を,落葉樹割合や葉の大きさに着目して検討する.これは平成15年度科学研究費補助金(基盤研究(A)(1))「アフリカの半乾燥地域における環境変動と人間活動に関する研究」(課題番号13371013,研究代表者 水野一晴)の成果の一部である.
 調査はナミビア共和国のほぼ全域,南緯17度_から_27度,東経13度_から_20度の範囲で行った.調査地域内で観測記録がある地点での年降水量は15 mm(Swakopmund:ナミブ砂漠中部)_から_570 mm(Groodfontein:北部カラハリ)の間である.ナミビアは自然景観的に三つの大きな地理地域に区分される.ナミブ砂漠(Namib Desert)は西側大西洋沿岸低地に位置し,降水量が極めて少なく,植生の発達はごく疎らである.中央高地(Central Highland)はナミビア中部に位置し,標高が高く起伏の大きい地形を呈し,基盤が露出し,一般に土壌が薄い.メガカラハリ(Mega Kalahari) はカラハリ砂漠の西,ナミビア東部に広がり,平坦で,カラハリ砂漠からの飛来砂が厚く堆積している.主要幹線道路を自動車で走行し,植生に対する人為の影響が軽微と思われる地点で砂漠およびサバンナ植生を対象に調査を行った.
 調査地点の年降水量と3階層の樹木植被率合計との間には正の相関関係がみられた.砂漠からサバンナへの移り変わりは年降水量100mm前後であった.サバンナ植生内では,降水量と3タイプとの間には明瞭な関係は認められなかった.落葉樹型は中央高地に現れた.ここは基盤が露出した起伏の大きい地形の上に土壌層が薄く堆積しているだけなので,保水力が少ないために,乾季には落葉せざるを得なくなると考えられる.常緑微小形葉型はメガカラハリ北東部に集中していた.ここは平坦地の上にカラハリ砂漠から飛来砂が厚く堆積しており,保水力は中央高地よりも優れている.そのために,乾季でも葉を着けたままの常緑性を維持することができる.常緑中形葉型は地理地域とはあまり明瞭な対応を示さず,メガカラハリおよび中央高地北西部の,モパネ(Colophospermum mopane)分布域に限定して出現した.このサバンナタイプはモパネの生態的特徴に依存して成立している.

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