日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会春季学術大会
会議情報

札幌市におけるスーパーの立地特性
-業態類型の多様化の側面から-
*経亀 諭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 8

詳細
抄録

1.はじめに

 都市内部および大都市圏の構造変容に関する研究の中で,小売業の分散の担い手としての大型店,特にスーパーの重要性が指摘されて久しい.地理学におけるスーパーの研究の中には,スーパーという業態そのものを固定的に捉えた上で店舗数や立地の変化を追うものや,スーパーの立地形態や販売形態の多様化を企業戦略から述べるものが多数を占めている.しかし,前者ではスーパーの店舗規模や形態(本研究では「業態類型」と総称) の多様化への言及がほとんど行われておらず,後者では都市の構造変化との関連についての言及が少ない.

 そこで本研究では両者を統合し,都市内における各スーパーの店舗規模や形態の差異,またその変化の過程を明らかにすることを目的とした.



2.研究方法

 本研究では,札幌市を事例地域とし,商業統計基準の「食品スーパー」「総合スーパー」を対象店舗とした.具体的な研究方法は以下の通りである.

 まず,わが国と札幌市におけるスーパーの発達史を概観し,業態類型を析出する.その際,GISを用いて1972・77・82・87・92・97・2002年の7年次の札幌市における各店舗の立地変化と,その他の社会経済的指標(おもに人口・小売業・交通に関する変数)との比較を行なう.また,より詳細な考察を行うために,2002年度の店舗データを用い,行要素を各店舗,列要素を各指標に基づいた立地特性とした因子分析を行なう.最後に,因子得点の業態類型ごとの平均値を比較し,業態類型ごと,あるいは業態類型内部における立地特性の差異を整理する.

 なお,資料として,(株)商業界・『日本スーパーマーケット名鑑』『日本スーパー名鑑』各年度版,札幌市企画調整局・『札幌市の地域構造』各年度版,(財)統計情報センター・『地域メッシュ統計 平成7年度国勢調査,平成8年度事業所・企業統計調査のリンク』を用いた.



3.結果

 分析の結果,札幌市におけるスーパーの業態類型の差異に基づく棲み分けやその変化の過程は,以下のように要約できる.

 1)1960年代,主に徒歩による近隣商圏をもつ形の食品スーパー(「伝統的食品スーパー」,「ミニスーパー」)が人口分布にほぼ比例する形で分布を開始し,2)続いて1970年代には公共交通機関および徒歩によるより広い商圏をもつ総合スーパー(「伝統的総合スーパー」)が出店をはじめた.3)1970年代後半には,郊外化やモータリゼーションの進展に伴い,総合スーパーは次第に自動車による更に広い商圏をもつ大型の店舗を幹線道路沿いに立地させるようになり,4)店舗が増加するにつれて,1980年代には差異化のために商品の高級化・低価格化をはかる総合スーパー(「高級総合スーパー」「総合ディスカウントストア」)が出現しはじめた.5)大店法規制が緩和された1990年代には,食品スーパーの中にも自動車による広い商圏を特色とした大型の店舗が幹線道路沿いに立地しだし(「食品ディスカウントストア」「スーパー・スーパーマーケット」) ,6)旧来の公共交通機関や徒歩に依存する形の総合スーパーのうち品揃えが不充分であった小型のものがカテゴリーキラー等の影響からより採算の取りやすい大型の食品スーパーに置き換えられはじめるという傾向がそれを後押しした.また,7)大型の食品スーパーやコンビニエンスストアに商圏を奪われた小型の食品スーパーの一部は,24時間化等の対応で生き残りを図った(「コンビニエンスストア対策形食品スーパー」).

 なお当日の発表時には,本稿で述べたスーパーの業態類型および立地展開の変化に加え,既存の小売業や人口の分布の変化との関連性についても更なる検討を加え,より詳細な結果を報告する予定である.

  Fullsize Image
著者関連情報
© 2004 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top