日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会春季学術大会
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中山間地域における高齢者のサポート資源に対するニーズ
*中條 曉仁
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p. 28

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抄録

 中山間地域では高齢化が顕著に進行しており,高齢化率30%を超える地域も多数出現している。地域住民にとって高齢化に伴う福祉・介護問題は,身近で深刻な課題となっている。中山間地域における高齢社会化の流れは,今後の日本全体における高齢化に先行するものといえる。 農山村の高齢者に対するサポート資源については,これまで世帯におけるサポートの提供を前提としたステレオタイプ的な議論がなされてきた。すなわち,農山村では高齢者を含む多世代同居比率が高く,しかも相互扶助が依然として強固に維持されているため,高齢者福祉サービス(フォーマルなサポート)を利用するよりも,家族によるインフォーマルなサポートのほうが現実的であるというものである。しかし,近年の中山間地域では世帯規模の縮小に伴う高齢世帯の増加と,世帯において介護を担う女性の農外就労によって,同居家族によるサポートの提供が困難な状況にあると考えられる。さらに世帯におけるサポートの提供は,サポート資源である家族員の生活にも影響を与えると思われる。例えば,中山間地域における農業の存続に関して,農業は基本的に世帯内で完結されるため,老親に介護の必要が生じる際には世帯内に緊張が生じ,それまでの経営形態に調整が求められるようになる。また,女性世帯員への介護負担の偏りが,彼女たちの就労にも影響を及ぼしかねない。今後の高齢化の進展によっては,より顕著な形でそれらに対する影響が現れるものと推測される。このように,高齢者のみならず介護の担い手がかかえる問題にも目を配りながら,サポートニーズを考察する必要があるだろう。本報告では,家族介護力の弱体化という問題に言及しながら,サポート資源(サポートの提供主体)の有効性について検討したい。具体的には,1.将来的にサポートが必要になった場合,高齢者がどのようなサポート資源を求めるのかについて,高齢者のニーズを測定する。2.高齢者を取り巻く地域社会や世帯の構造面での変質が,高齢者のサポートニーズに対してどのような影響を及ぼしているのかを検討したい。

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