日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会春季学術大会
会議情報

東日本における主要逆活断層の変位量・変位速度分布から見た活動セグメントの評価
*高橋 就一橋森 公亮今泉 俊文中田 高
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 39

詳細
抄録

1.はじめに
 演者らは,いわゆる98活断層帯のうち,北海道から東北地方に分布する逆断層帯を対象に,文献調査に基づいて,変位地形の位置・変位量・平均変位速度に関する情報を収集し,これらのデータベースを構築した.またこのデータベースを利用して,断層沿いの変位量分布図,および平均変位速度分布図を,それぞれ断層帯ごとに作成した.そして変位量・平均変位速度の分布図から,活動セグメントがどのように仕分けられるかを試みた.
2.活断層情報のデータベース化と変位量・変位速度分布図の作成
 本研究では,既存文献にある活断層の調査結果の中から,変位量に関する記述を出来るだけ忠実に読み取り,その結果を地点ごとに整理してデータベースを作成した(図1).データベース中の情報は,断層に沿った地点(ID)ごとに,_丸1_断層変位(変位量,変位地形,変位基準など)に関する情報,_丸2_変位量が記載されている文献の情報,_丸3_変位量や年代がどのような基準で求められたかをカテゴリ分けした分類基準の大きく3つから構成される.そして,データベース化された情報に基づいて,各断層の走向方向に沿った変位量分布図および平均変位速度分布図を作成し(図2),活動セグメントの仕分けを試みた(並走するセグメントの変位速度に関してはそれらを累算し,断層帯全体の変位速度分布も示した).
3.平均変位速度の分布形状および地形との対応
 一般に対象地域においては,活断層に沿う平均変位速度の分布は,末端に向かって減少する,「山型」の分布形状を示す.これに対して,末端付近においても,平均変位速度が依然として大きい「釣り鐘型」の分布形状を示すセグメントも見られた.これは,断層が末端方向へさらに延長される(すなわち,活断層を見落としている)可能性を示唆している.しかし,平均変位速度が速い場所は,「動きやすい場所」でもあるので,地表で認められる活断層沿いの変位量(平均変位速度)分布の差異は,地下の断層のアスペリティの分布の違いを反映している可能性が高いとも考えられる.
 対象地域における変位速度分布と山地高度との対応に関しては,今泉(1999)が奥羽山脈の隆起に山麓の活断層が強く働いていることを指摘した例がある.本研究でも東日本の主要逆断層帯に沿っては,変位速度分布の形状が,山地高度や段丘面高度分布と調和的であり,走向方向における分布の違いが地形形成に関与していると考えられる.しかし,逆に変位速度分布の形状と山地高度とが不調和な場所もある.変位の累積様式,活動開始時期の違い,活断層の移動現象などが考えられるので,今後検討が必要である.
4.活動セグメントの認定および活断層データベースのGISソフトへの導入
 現在,近接する断層が互いに連動して活動するかどうかを評価する目安の一つとして,両断層の境界部分における平均変位速度の分布形状に注目している.これに合わせて,データベース化した活断層の諸元情報を,GISソフト上に導入する作業をすすめている.これによって,地点ごとの変位量が過大評価されていないか,逆に過小評価されていないか吟味され,さらに不足データ取得のための調査計画が効率よく行われるだろう.

  Fullsize Image
著者関連情報
© 2006 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top