日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 210
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戦中期に日本軍が中国大陸で撮影した空中写真の標定について
*岡本 有希子長澤 良太今里 悟之久武 哲也小林 茂
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抄録


 日本軍は,1928年以降空中写真による地図作製を本格的に開始し,第二次大戦中も各地でこれを実施した.これらの写真は,かなりが終戦時に焼却されたが,2002年9月アメリカ議会図書館で発見された.翌2003年には,このうち標定が可能と思われるもの723枚をスキャンして持ち帰り,この一部について中国製衛星写真と比較対照しつつ標定に成功し(安徽省五河付近),すでに分析がこころみられている(長澤ほか, 2005, 岡本勝男, 2007).本発表は、さらに残されていた空中写真について、とくにその方法と撮影地域を報告する.
1. 標定の方法
 空中写真に付された地名はごく簡略なため,地名辞典によりまず関係する地域を特定した.スキャンした空中写真をプリントし,これを飛行コース(東西方向)ごとにはりあわせて特徴的な地形を観察してから,Google Earthによって類似のものを探した.拡大縮小が容易なGoogle Earthでは能率的に作業を進めることができ,ひとまとまりの飛行コースの標定はほぼ一日で終了した.
2. 撮影場所
 図1にそれぞれの位置,表1にひとまとまりの飛行コースの北西・南西・北東・南東隅の緯度経度を示す.緯度経度は暫定的にGoogle Earthにより読み取ったもので,今後の本格的な標定の参考にするものである.撮影地域は農村部にかぎられ,特徴的な農地パターンがみられた.またGoogle Earthにみられる湖岸線や農地パターンと比較すると,大きな変化がみとめられ,解放後の中国における土地開発の進行がうかがわれた.今後は本格的な標定をおこなうとともに,オルソ化などもすすめたい.

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© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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