日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: 316
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関東平野北部猛暑の際の日最高気温起時の地理的分布
*細矢 明日佳渡来 靖中川 清隆
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抄録
I_.はじめに

 夏季の関東平野北部にはしばしば著しい高温が出現することが知られている。その成因に関しては北太平洋高気圧の張り出し、フェーン現象、海風限界外、海風による首都圏中心部からの熱移流等々諸説があるが、明確な結論はまだ得られていない。関東平野に猛暑をもたらす天気系の一つに、北西山越え気流が指摘されている。近年における北西山越え気流による高温の代表例として、2007年8月16日と2004年7月20日を取り上げ、日最高気温と同起時の分布の関係を検討したので、その結果の概要を報告する。

II_. 日最高気温と同起時の分布

 アメダスデータを解析して2007年8月16日の日最高気温分布図を作成した(図省略)。西日本に中心を持つ北太平洋高気圧が日本海西部にまで張り出したため、当該地域の卓越風は北西山越え気流となった(9時の館野800hPaの風向329°風速4m/s)。関東平野北部を中心として、著しい高温となっており、熊谷は40.9℃となりわが国最高気温を更新した。関東平野東部から房総半島にかけて別の高温域が認められる。次に、日最高気温起時の等時線図を作成した(図省略)。関東平野北部および東部の高温域に対応して、日最高気温起時が遅い地域が存在する。最も遅かったのは東関東・笠間の15:30であり、続いて北関東・館林の15:00である。一方、九十九里浜では午前11時以前に日最高気温が出現した。
 2004年7月20日の日最高気温分布も作成した(図省略)。2007年8月16日と同様の気圧配置となり(9時の館野800hPaの風向303°風速18m/s)、関東平野北部は著しい高温となったが、東関東の高温は極端ではなく、むしろ南関東および房総半島がそれを上回る高温域となっている。同日の日最高気温起時分布図を作成したところ(図省略)、関東平野北部にも遅いピークが存在するが、関東平野中央部および東部に広く起時が遅い地域が広がっている。関東平野内で最も遅い日最高気温起時は東関東・笠間の16:20である。房総半島では東京湾側から太平洋側に向かって、日最高気温起時が遅れる傾向が明瞭である。日最高気温高温域と起時が遅い地域の対応は、2007年8月16日ほど明瞭ではない。

III_. 日最高気温と同起時の関係

 最後に、北関東、南関東、東関東を区別してプロットして、関東平野における日最高気温起時と日最高気温の散布図を作成した(図省略)。2007/8/16は、最高気温起時が1時間遅れると日最高気温が0.7℃高くなる傾向が認められ、相関係数は0.4に達する。2004/7/20には、明瞭な依存性は認められない。
 発表当日までに、北西山越え気流の解析事例を増やすとともに、それ以外の天気系における解析も手がけたい。
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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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