日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S702
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日本におけるジオパーク推進活動
これまでとこれから
*渡辺 真人
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抄録


はじめに
 日本におけるジオパーク推進活動は、これまで日本地質学会と産総研を中心に進められてきた。その経過と現状をまとめ、今後どのように進めていけばよいのか考えたい。
なぜジオパークか
 地震、火山噴火、土砂災害などが頻発するという地質・地形条件にある日本列島では、地球科学は生命の安全に関わる科学であり、本来市民にもっとも親しまれ活用されるべき科学である。しかし、地震の度に新聞には「まさかXXに地震が起こるとは」という住民の声が報道されるなど、そうなっていないのが現状である。これまでジオパークを推進してきた日本の関係者の主たるモチベーションは、ジオパークを通じてこの現状を変え、地球科学がもっと社会で活用されるようにしよう、という点にある。
これまでの推進活動
 2004年に世界ジオパークネットワーク(GGN)が設立されると、日本地質学会では同年9月にジオパークに関する集会を開き、2005年にジオパーク設立推進委員会が同学会内に設立された。2006年に国際惑星地球年(IYPE)が国連総会で決議され、そのキャッチフレーズが「社会のための地球科学」と決まると、ジオパークの推進は、日本におけるIYPEの主要な活動の一つであると日本地質学会で位置付けられた。
 2005年から2006年にかけて開催されたNPO法人地質情報整備・活用機構が開催したGeoForum、2007年2月の第四紀学会、同年5月の地球惑星連合大会などでジオパークが紹介された。学界と地域でのジオパーク推進への機運の高まりが2007年6月に朝日新聞科学面で大きく取り上げられ、地域でのジオパーク設立とGGN加盟申請への動きが加速した。
各地域での活動
 現在ジオパーク設立を準備している地域には、博物館などを中心に、ジオツーリズム的な活動をすでに行っている地域が多い。たとえば、有珠山周辺地域では、2000年噴火以降エコミュージアムとして有珠・洞爺湖周辺の火山を含めた自然を学ぶ旅を推進してきている。また、糸魚川ではフォッサマグナミュージアムを中心として、1991年からジオパークとして野外活動などを行っている。小規模ではあるが、活発に活動している地学系博物館は各地にあり、ジオパークの枠組みが今後そのような博物館のさらなる活性化に利用できるだろう。
 当初ジオパーク推進に対する国の関連省庁の援助を大きく期待している地域も多かった。しかし、自分たちの地域のことは自分たちでしなくてはいけない、と糸魚川市が呼びかけて、2007年12月に各地域ジオパークを推進するための日本ジオパーク連絡協議会が設立され、地域自らの力による推進活動が始まった。
関連省庁の動き
 ジオパークをユネスコ本体のプロジェクトとする提案が総会で否決されたことから、関連省庁はあまりジオパークに積極的ではなかった。しかし、上記の連絡協議会設立、ジオパークに関する新聞報道の増加などを受けて、様々な動きが現在進行中である。
今後の活動
 現在、日本ジオパーク委員会(JGC)と日本ジオパークネットワーク(JGN)を設立して日本のジオパーク運動の核としようという構想が進行中である。JGCは地域のジオパーク(計画)を審査し、JGN加盟を認定するとともにきちんと活動しているか定期的に再評価し、JGN加盟ジオパークの中からGGN加盟申請候補を推薦する。JGNは日本のジオパーク活動の中心であり、ジオパークのレベルアップのためのワークショップなどを開催するとともに、ジオパーク全体の広報活動を行う。日本ジオパーク連絡協議会がJGNの母体となると期待される。
 これまでの推進活動はもっぱらジオパークという仕組みの広報活動で、今のところ具体的なジオパークの構想に関しては、それぞれの地域に任されている。そのため、活動のレベルは地域ごとに様々である。今後関連学会の協力のもと、各ジオパーク(を目指す地域)の支援をしていくことが必要である。また、日本のジオパークが保護と地域振興を両立した良い方向に進むよう、JGCが評価機関としての役割をきちんと果たせるような委員会となることが重要である。

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