日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 315
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アムール川中流域における洪水の数値解析による湿地の遊水地機能評価
*室岡 瑞恵桒 原 康裕春山 成子山縣 耕太郎
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キーワード: アムール, 湿地, 洪水, 流量, 遊水池
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抄録
I 背景及び目的
 国際河川アムール川は3カ国を流れる延長4,350km,流域面積2,051,500km2の大河である。中流域の極東ロシア・ハバロフスク周辺は湿地帯であり,雨期に洪水が発生する。
 本研究では当該地域の洪水の数理的解析を行い,洪水特性を明らかにするとともに,洪水を受ける地形要因との関係にも着目して,湿地の地形立地と洪水軽減を明らかにした。
II 方法
 洪水特性を明らかにするために,王立オランダ気象研究所が有する1910年1月~2003年4月の月降水量統計を用い,解析を行った。解析方法は星(1998)に従った。また,ハバロフスク水文研究所の観測地点のアムール川における月最大流量を取り上げて1960~2003年の月降水量と月最大流量との関係を明らかにした。
 湿地に関しては堪水域を湿地と定義し,Murooka. et al. (2007)の方法を用いて地形別の湿地面積を求め,降水量との関係を明らかにした。最後に,降水量と湿地面積の関係を明らかにすることにより,どの地形立地の湿地が洪水を軽減しているかを明らかにした。
III 結果と考察
 最大月降水量の頻度分布は指数分布に従っていた(カイ二乗適合度検定でp>0.05)。100年に一度起こる降水量は832mm/month,50年,20年,10年,5年に一度起こる降水量はそれぞれ717,565,447,324であった。月別の平均降水量は11~翌年3月は50mm/month以下であるのに対し,6~9月は70を超えるなど季節変動が大きく,中でも7月と8月は100を超えていた。
 横軸にハバロフスク月降水量 (mm/month),縦軸にハバロフスク月平均流量 (m3/sec)をとると,ANOVAで有意水準0.001以下でロジスチック曲線が適合した(図)。月平均流量の95%である降水量84.0mm/monthよりも大きいときに河川が許容量を超え氾濫し,洪水が起こる計算になる。
 降水量と地形別の湿地面積との相関を調べた結果,氾濫原の湿地面積のみ有意な相関が見られた。よって,すべての地形の中で氾濫原の湿地がもっとも遊水地としての機能を大きく果たしていると考えられる。
参考文献
1) 星清1998. 洪水ピークの確率評価法について. 開発土木研究所月報No. 539: 34-40.
2) Murooka, M., Haruyama, S., Masuda, Y. 2007. Land Cover Change Detected by Satellite Data in the Agricultural Development Area of the Sanjiang Plain, China. Journal of Rural Planning 26: 197-202.
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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