2007年の琵琶湖湖岸全域にわたる湖岸の土地条件調査結果のGIS化を行ない、地形、ヨシや樹木などの植生、人工的改変状況等の湖岸の形態と状況をもとに類型化した結果、琵琶湖湖岸は44種類に区分できた。北湖と南湖では、南湖のほうがコンクリート、石積み等で護岸された人工的湖岸が占める割合が大きかった。南湖に注目すると、西岸より東岸で人工湖岸化がより顕著で、西岸には、砂地やヨシ帯などが比較的多く残っていることがわかった。人工的湖岸は、コンクリート護岸が最も多いが、石積み護岸も約30%を占め、石積みによる人工護岸化も多用されたことがわかる。また、西岸より東岸のほうで石積み護岸の人工的湖岸に占める割合がやや大きくなっていた。
1940年代末の米軍航空写真からの抽水植物帯判読結果からは、かつては東岸において抽水植物の分布域が大きく位置していることがわかった。南湖東岸は、歴史的にはヨシ帯が卓越していた地域であり、近自然工法による石積み護岸だったとしても、異なった構造の湖岸に変わったことには違いなく、在来魚等の生息環境に大きな影響を与えた可能性がある。
今後の琵琶湖湖岸の再生は、地形特性など、元来、その地域が有していた固有の湖岸環境についても考慮することが必要だと考えられる。