日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 707
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九州における大雨の地域差とその要因
*山口 隆志
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抄録

1. 研究目的 近年,大雨が増加していることは梶原ほか(2003)などの研究によって明らかにされており,この傾向が今後も続くようであれば,大雨によって起こる災害も多発すると考えられる.とくに最近の研究で大雨による災害の事例報告が多くなされており,それは主に九州を対象とした報告が多い.災害を引き起こす大雨がどのような地域でどのように起こっているのか,また経年的にどういう傾向にあるかを明らかにすることは防災上からも重要である.そこで本研究では九州における大雨の地域差とその要因を明らかにし,それが経年的にどのように変化しているかを明らかにした. 2. データと解析方法  本研究ではAMeDASデータを使用し,日降水量100_mm_以上を大雨と定義した.対象期間は片岡(2007)が指摘するように,1976年以降2,3年で増加していることと経年変化を検討することを考慮して1978~2007年の30年間とした.このうち気象台,観測所が移転している地点,または対象期間の10%にあたる3年以上欠側がある地点を除外した結果,対象地点は121地点となった.  日降水量100_mm_以上の大雨をもたらした気象擾乱の解析には気象庁天気図を用い,さらに850hPa,700hPa,500hPaの風向などから総合的に判断し,低気圧,寒冷前線,停滞前線,熱帯低気圧を含む台風(以下,台風とする),複合要因,その他の6つに分類した. 3. 結果  九州における大雨の年変化を解析したところ,7,6,8,9月の順に集中して出現している.6,7月の大雨は主に阿蘇山や霧島連山地域とその周辺に低気圧と停滞前線によってもたらされ,8,9月の大雨は主に九州山地南東部と霧島連山地域に台風と複合要因によってもたらされた.また30年間における経年変化を検討したところ,1970年代後半と比較して2000年以降は約50日の大雨の増加が認められた.10年毎に区切ってみると,1978~1987年は九州北西部で頻度が高かったが,1998~2007年は九州南部に頻度の高い地域がシフトしていた.最近の大雨を増加させた擾乱を解析すると,九州南部で台風と複合要因による大雨が増加したことが明らかとなった.  また発生頻度や発生要因,経年変化の分布をもとに九州を以下の6つに区分した.K-N地域は主に低気圧による大雨が出現しているが,30年間を通しての発生頻度は少ない.K-W,K-E地域は近年の大雨が増加しており,K-Wは海岸地域に台風と複合要因K-E地域は台風と複合要因に加え,停滞前線による大雨が増加していた.K-S地域は台風による大雨の頻度が高く,屋久島は低気圧による大雨が多い.K-M地域は大雨の出現頻度が極めて高いが,寒冷前線による大雨の出現は低い.K-NE地域は大雨の出現は低いものの,近年は停滞前線と台風による大雨が増加している. 文献 梶原 誠,沖 大幹,松本 淳 2003.日本における100年間の豪雨頻度の経年変化.日本気象学会講演予講集 83:484. 片岡久美 2007.台風通過時における日本列島の降水分布と大雨発生頻度に関する月別の特徴.地理学評論 80-3:99-120.

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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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