日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 808
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家庭ごみ収集車の経路選択に関する要因分析
― つくば市東地区を事例に ―
*山本 倫芳
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抄録

_I_.問題の所在と研究目的 1972年の廃棄物処理法の施行以降,市町村は,排出量等の地域の状況を踏まえながら,現在も最適な収集・処理方法を模索している.ごみ収集経路に関する既往の研究では,モデル構築やシミュレーションの際に集積所や区域を均一なものとして扱う傾向がある.また,集積所の位置データと道路データから最短距離経路を導くにとどまり,ごみ収集の実態を十分に把握できていない.これまでの成果に加え,最適なごみ収集の経路を考えるにあたっては,よりミクロな地域的スケールでの分析が必要である.そこで本研究では,茨城県つくば市東地区を対象に,ごみ収集の実態を把握するとともに,ごみ収集の経路選択を規定する要因を明らかにする. _II_.研究方法 まず,家庭ごみ収集事業者の協力のもと,現地調査(収集車に同乗)及び聞き取り調査を行い,収集順次,経路,集積所位置の情報と,作業等ごみ収集の実態を把握する. 次にGISを用いて道路距離にもとづく最短経路探索を行い,最短経路を求める(ここでいう「最短経路」は,絶対的な「最短」を意味せず,最短経路探索の結果としての経路名称とする).実際経路と最短経路の差異を考察し,経路選択を規定する要因を探る. _III_.結果・考察 現在の収集順次やその経路は,当該地域の地理的環境に慣れている作業員が,前任者とともに作業を行う中で学習し,その後,作業者にとって最も適した経路であるよう変更するなど,経験則に基づき決められたものであることが確認された. また収集順次や収集車ごとの収集区域の設定には,ごみ量と作業時間が主な要因であると認識されているが,加えて,この分析により,その地域・地点に特有の状況・条件が影響していることが明らかになった.例えば,通勤時間帯である8:00頃に回収を行う地区において,集合住宅併設の駐車場脇に立地する集積所については,収集車の停車により出入り口を遮らないような経路となるようにしている.また,烏や猫などにより,頻繁にごみが散乱している箇所があり,集積所の清掃のために,一箇所あたりの作業時間が増加し,このことは収集区域の決定に影響している. 実際経路と最短経路の差異は,実際経路における選択結果行動としてa) 転回回避,b) 対向車線における右寄せ停車,c) 単純な経路指向による迂回,d) 中・長距離パスにみられる選択指向の4点にまとめられた. また,a) 転回回避の理由にはa-1) 3~4つの集積所間の流れを重視,a-2) 十分なスペースがあり転回可能だが進行方向を保持,a-3) 十分なスペースが無く転回不可能の3点が挙げられ,d) 中・長距離パスにみられる選択指向には,d-1) 親近性のある道路,d-2) 幅員が広く走行が快適の2点が挙げられた. _IV_.結論 実際経路と最短経路の差異を考察した結果,ごみ収集の経路選択要因は,運転者の特性である「内的条件」と,交通環境などの「外的条件」に分けられる.内的条件(運転者主体特性)には,運転技術,作業経験年数による経験値,走行環境の嗜好などに現れる個性があげられる.外的条件としては,幅員や道路形状を示す物理的環境,交通量や道路の格(主要県道・住宅街路)を示す社会的環境,季節・曜日・時間を示す時期があげられる.

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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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