日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 204
会議情報

仙台市における戸建住宅団地の高齢化
*伊藤 慎悟
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.はじめに
 近年、大都市郊外地域では、人口高齢化への関心が高まっており、地理学分野でも多くの研究成果が上げられている。伊藤(2008)では、神奈川県内で1960年代後半に開発された民間の戸建住宅団地を取りあげ、居住者の年齢構成が入居当初から異なり、それがその後の高齢化に影響を及ぼしていることを明らかにした。
 そこで、本研究では神奈川県での事例研究を踏まえ、他地域の戸建住宅団地でも同様な傾向がみられるかを検証することを目的とし、仙台市を対象に1960年代に開発された戸建住宅における高齢化状況と、その差異について報告する。
2.研究対象地域
 研究対象は、旧泉市(現泉区)を除く、仙台市にある1960年代に開発された住宅団地とした。
 選定理由として、東北地方の広域中心都市である仙台市には、1960年代を中心に市域人口が急増し、多数の住宅団地が開発されたこと、住宅団地に関する調査報告書が存在すること(仙台市1971『住宅団地調査結果報告書』.)(フルタプランニング『仙台圏分譲地と住宅の案内』)、都市構造や高齢化(人口構成)に関する研究がかなり蓄積されており、これらの事例結果を踏襲できることが挙げられる。
 研究対象とした住宅団地は、現泉区を除く仙台市内にある民間(一部公営)の戸建住宅団地である。開発年次は、1960年代に開発された21団地(1960年代前半11団地、後半10団地)を対象とし、年度別入居者のピークが1966~1971年のいずれかに該当するもの(仙台市『住宅団地調査結果報告書』より)を選定した。これらの団地は、いずれも国勢調査の調査区別集計から経年比較が可能なものであり、さらに1995年以降の町丁字別集計にもある程度対応できる範囲とした。団地の規模はいずれも100~1,000戸程度である(フルタプランニング『仙台圏分譲地と住宅の案内』より)。
3.分析結果
(1)対象団地の年齢構成と高齢化状況
 仙台市の住宅団地は、1975年時点で平均年齢29.0歳、高齢(65歳)人口比率3.6%と、神奈川県の住宅団地のそれとほぼ同じであった。2005年には、平均年齢46.5歳、高齢人口比率27.4%となり、高齢化は着実に進んでいるが、神奈川県と比べやや低くなっている。
 5歳階級別人口比率に関しては、神奈川県でみられたような、0~9歳の子(第2)世代と、30~44歳の親(第1)世代が大きな山を形成するような年齢構成にならず、団地によって差異が大きくみられた。
(2)対象21住宅団地間の差異
 χ二乗検定によって、今回対象とした住宅団地の5歳階級別人口比率は1975年、2005年ともに同じでないことが証明された。一方、開発時期が1960年代の前半11団地と後半10団地との間で同様に5歳階級別人口比率を比較したところ両者の間に明瞭な差異はなく、一元配置の分散分析より、両期間の差異よりも、同期内での住宅団地の年齢構成の方が差異は大きいことが判明した。したがって、本研究では前後期に分けず、21住宅団地をほぼ同時期に開発された住宅団地として扱うこととした。
(3)各団地における年齢構成の類型化と居住地・居住者属性
 ここでは、各団地の1975年の5歳階級別人口比率から、いくつかのグループに分類し、年齢構成と人口以外の要素(居住者・居住地属性)との関連を明らかにする。
また、各団地における高齢化の進展状況についても団地ごとの類型化を試みている、分析結果の詳細については、発表時に解説する。
文献
・伊藤慎悟2008.民間戸建て住宅団地における高齢化の差異―神奈川県を事例として―.地理科学63:25-37.

著者関連情報
© 2009 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top