日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 308
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1960年以降の7大都市におけるごみ排出・管理の比較
*波江 彰彦
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抄録

1. はじめに
 本発表では、1960年以降の大都市におけるごみ排出量,ごみの直接焼却処理率,リサイクル率などの推移や,ごみ管理の内容,またこれらに影響を及ぼすと考えられる事柄の指標を比較検討する.こうした作業を通じて,大都市におけるごみ排出・管理の共通点と相違点を明らかにする。ここで取り上げるのは、札幌市、東京都特別区、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市の7大都市である。なお、本発表における「ごみ」とは家庭系ごみと事業系ごみを指し、産業廃棄物やし尿などは含まない。
2. 大都市におけるごみ排出の特徴
 図1は日本全国および7大都市における1人当たりごみ排出量の推移を示したものである。おおまかには、高度経済成長期から現在までの急増,減少・横ばい,再び増加してピークを迎え減少局面へという流れがみられ,経済状況の長期的なうねりがごみ排出のダイナミックな変動を引き起こしていることがうかがえる.
 都市間の相違の例として横浜市と大阪市の違いは特徴的である。7大都市の中でも昼夜間人口比率や事業所の集積度合いが高い大阪市では1人当たりごみ排出量が多く、7大都市の中で唯一昼間人口流出超過であり事業所数も相対的に少ない横浜市では1人当たりごみ排出量が少ない。
 施策的要因として、2003年度から開始された「ヨコハマはG30」と銘打ったキャンペーンと多分別収集化は横浜市における1人当たりごみ排出量の急減に直接的・間接的に効果があったと考えられる。7大都市の中で大阪市における事業系ごみの処分場搬入手数料は安く、ごみ排出量を押し上げる要因となっていることが推察される。対して、名古屋市の「ごみ非常事態宣言」(1999年)とその後の事業系ごみ規制は効果を上げていることがうかがえる。
3. 大都市におけるごみ処理の特徴
 大都市では1970年代に焼却処理体制の整備が最も進んだ。近年、ごみの直接焼却処理率は横ばいか、東京都特別区や横浜市のように低下しているケースもみられる。これはリサイクルの推進と関係がある。リサイクル率では関西3都市の低さが顕著である。この要因は、高い直接焼却処理率の裏返し、行政による資源化の低調のほか、住民による資源回収(集団回収)量の少なさなどが挙げられる。横浜市や名古屋市では集団回収量の高い実績がみられ、リサイクル率の高さに結びついている。

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