日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 312
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オフィスビルの大型化が都市内部構造に与える影響
*菊池 慶之
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抄録

1.研究の目的
 オフィスビルの開発は、開発自体が当該地区のオフィス密度、従業者密度を飛躍的に高め、ビジネスサービス産業や関連産業の立地、周辺地区の商業ポテンシャルの向上などに結びつく。特に、超高層のオフィスビルや街区単位の超大型開発は、地域イメージの向上やランドマークとしての役割も大きく、都市の構造に大きな影響を与える。  しかし、大型オフィスビルの開発は、立地や開発時期により、周辺地域に正負のまったく異なる影響をもたらすことが指摘されている。そこで、本研究では、2000年以降の景気回復局面における、オフィス開発の特徴を明らかにした上で、大型オフィスビルの開発が都市内部構造に与えている影響を明らかにする。
2.オフィスビル大型化の背景
 高い収益性を見込める都心のオフィスビルの規模は、従来建築規制と開発リスクによって規定されてきた。しかし、規制緩和と不動産への投資の拡大がこれらの規定要因を低減させたと同時に、需要サイドからも1フロアの床面積を大きく取れる超大型オフィスビルへの指向性が高まった。特に、2001年のJ-REITの上場、2002年の都市再生特別措置法施行は、オフィスビルの大型化を強力に後押ししている。この結果、東京都心5区における10万_m2_以上の超大型オフィスビルが、新規供給に占める割合は、1980年代には13.2%に過ぎなかったが、1990年代には29.0%、2000年以降では46.0%にまで高まっている(図1)。
3.超大型オフィスビルの周辺エリアへの影響
 次に、本研究では、延床面積が10万_m2_以上の超大型オフィスビルが周辺エリアに及ぼす影響を明らかにするため、まず都心5区において、2002年~2005年の間に竣工した床面積10万_m2_以上のオフィスビルを「新規超大型オフィスビル」(15棟)とした。次に、新規超大型オフィスビルの立地する町丁を、「超大型オフィスビル所在町丁」、それに隣接する町丁を「隣接町丁」とし、それ以外の地区との比較を通して検討を行った。  この結果、超大型オフィスビル所在町丁では、2001年~2006年にかけて、従業者数が10.5万人増(77.0%)、隣接町丁では4.1万人増(7.0%)と、超大型オフィスビル開発の周辺地区で従業者数が大きく増加しているのに対して、その他の地区では従業者数が1.0万人減(-0.4%)となっており、従業者の都心回帰が、もっぱら超大型オフィスビルの立地によっていることが読み取れる(図2)。  ただし、六本木南エリアにおける検討の結果、超大型オフィスビルの隣接町丁においては商業従業者数や商品販売額への直接的な波及効果は少なく、むしろ大規模再開発の内部へ吸引される傾向がみられた。
4.結論
 オフィス開発を取り巻く状況の構造的な変化は、オフィスビルの大型化をもたらし、特に2000年以降1棟10万_m2_を超える超大型オフィスビルが急増した。このようなオフィスビルの大型化は、高密なオフィス集積を形成することにより、都心のオフィスエリアを集積の高まる地区とそうではない地区とに二極化させる効果を持つ。近年のオフィス立地の都心回帰は、集積の経済を志向する企業の、組織再構築の結果と論じられるが、オフィスストックの供給そのものがオフィス集積の再編を促す側面を持つことが指摘できる。  また、オフィスビルの大型化が、ビルの「街化」を促進し、周辺への波及効果を弱めている可能性がある。超大型オフィス開発は、その多くが商業や住宅との複合開発であり、一連の開発エリアから外に出なくても生活できるというコンセプトを掲げている。また、オフィスビル自体も事務所用途ばかりでなく、医療、教育、宿泊施設など多様な用途の複合により、話題性と集客力の向上を図ってきた。このためオフィスビルの「街化」は、ビル所有者にとっての稼働率向上、需要者にとっての利便性の向上を同時に満たす手法として今後も進められていく可能性がある。

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