日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 104
会議情報

ナミビア半乾燥地域のモパネ植生帯におけるヤギの放牧活動と植生の関わり
*手代木 功基
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

はじめに
アフリカ大陸の南緯20度付近にはマメ科ジャケツイバラ亜科の半落葉樹であるモパネ(Colophospermum mopane)が帯状に分布し,モパネ植生帯を形成している.モパネ植生帯の特徴として,先行研究ではモパネが純林を形成していることや草本が少ないということが指摘されてきた.
ナミビア北西部のモパネ植生帯においては,年平均降水量が250mm程度と少ない降水量のもとで,植生に依存した牧畜が地域住民(ダマラ)の重要な生業となっている. したがって,干ばつなどの環境変動が人々に大きな影響を与える本地域の持続的な自然利用を考えていくためにも,モパネ植生帯の特徴と放牧活動の関係について詳細に明らかにする必要がある.本研究は長期間の現地調査をもとに,ダマラの人々にとって重要とみなされているヤギ放牧が植生といかなる関わりをもって営まれているかを明らかにすることを目的としている.
方法
調査地は,ナミビアのクネネ州南部に位置するレノストロコップ村である. 調査は2006年8月から2007年3月と2008年8月から2009年1月に実施した. まず,植生については主に木本を対象として,出現種と樹高,幹数,胸高直径を記録した.調査は地形単位を設置基準としたコドラート調査(20×20m, 計77サイト)と,住居・水場を基点としたライントランセクト調査(約2km×3本)を行った. 次に,ヤギの採食物について具体的に明らかにするために,ヤギの採食行動の追跡調査を2008年9月から2009年1月の期間中に計15日間実施した.その際には対象個体を設定し,ヤギが採食している植物種とその採食時間を,15分間隔で記載した.また,放牧ルートはGPSで記録した.
結果と考察
植生調査の結果,植生構造およびモパネの樹形は,水場・住居からの距離と地形単位によって異なっていた.水場・住居からの距離が近い場所では,中・高木で幹数の少ないモパネが優占しており,葉は幹の上方の高い位置にのみ存在していた.また,樹木密度は少なかった.一方で,水場・住居からの距離が遠いペディメント上では,モパネ以外の樹種が優占する場合が多く,樹木密度は高い値を示した.またモパネの樹形は水場・住居に近い場所のモパネの樹形とは異なり,複幹の低木となっていた.そのためモパネの葉は低い位置にみられた.
ヤギの採食行動の追跡調査から,本地域では木本種,特に矮性化した樹木(シュラブ)が重要な採食種となっていることが明らかになった.また,季節によって長時間採食されている植物種には違いがみられたが,モパネは季節を問わずに一定の割合で採食されていた.ヤギは水場・住居付近では移動するのみで,採食はシュラブが密に分布するペディメント上で主に行っていた.
樹形が場所によって異なっている原因として,第一に地形単位が異なることによって生じる土壌水分などの環境条件の差異が挙げられる.住居付近には季節河川があり,樹形は高木になりやすい一方,ペディメント上では水分条件の厳しさから樹木は矮性化していると考えられる.また住居・水場付近は採食圧が高いため,樹木の葉は家畜が採食可能な位置では少なくなっていた.このように環境条件や採食圧の差によって植生景観は異なっており,その植生構造や樹形の場所による違いを有効に利用して,ヤギの放牧活動は行われていた.
(本研究は,平成17-20年度文部科学省科学研究費補助金・基盤研究A(研究代表者:水野一晴)「南部アフリカにおける「自然環境-人間活動」の歴史的変遷と現問題の解明」の一環として行われている.)

著者関連情報
© 2009 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top