日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P909
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日本の都市はどんな地形に展開しているのか
*村山 良之梅山 浩
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抄録

 日本における近世以降の都市は,広い後背地を控えて交通も便利な平地に形成された(矢嶋,1956)。初めてDIDが設定された1960年国勢調査結果をもとに,斎藤(1965)は,地形ごとのDID面積が低地68.0%,台地23.9%,丘陵4.4%,山地等3.4%等であることを明らかにし,矢嶋の指摘を定量的に裏付けた。ところがちょうどその頃以降,爆発的な都市化が進行した。1960年と2005年のDIDを比べると人口は2.1倍,面積は3.3倍になった。この間,大規模な住宅地開発が丘陵地等に多いことが指摘され(田村,1982等),また近年の日本の地震災害ではほぼ必ず都市郊外の造成宅地等で特徴的な被害が発生している。これに限らず地形は自然災害に対する土地条件としての指標性が高い。しかし,都市が位置する地形に関する検討は上記以外ほとんど見あたらない。本発表の目的は,GISを用いて複数年次のDID面積を地形ごとに計測し,日本の都市がどんな地形に位置し,また変化してきたかを,定量的に明らかにすることである。

○ データと処理手続き
データ
 DID=人口集中地区 1960~2005(5年ごと)
  国土数値情報(国土交通省 国土計画局)
  BL座標 世界測地系 都道府県別 JPGIS準拠 XML

 土地分類図(地形分類図)
  土地分類調査(国土交通省 土地・水資源局)
  BL座標 世界測地系 都道府県別 元は1/20万図
  地形分類 原図どおり全国ばらばらで不統一

処理手続き

(全体)
DID(都道府県ポリゴンデータ)
→ shapeに変換 + 地形分類(shape提供)
→ 都道府県shapeを結合
→ 座標系を統一:53帯(東経135度中央子午線)UTM座標,m単位
→ グリッド(100m四方メッシュ)に変換
→ グリッド演算でクロス集計ほか

(地形分類)
都道府県ごとに異なる地形分類項目
→ より少数の上位カテゴリーに再分類(統合)
→ 最終的に以下の8分類
   山地,火山地,山麓地,丘陵地,台地,低地,
   埋立地・干拓地,水部・その他
→ 手作業による調整
  例:人工改変地は原地形を判断して復元,
    内水面・最近の埋立地を追加し「水部・その他」に

○ 結果
 地形分類をさらに4分類にまとめ,1960年と2005年について全国と都市圏ごとに表に示した。_丸1_ここで計測した全DID面積は公表値との誤差が0.2%に収まる。本手法の妥当性を確認した。_丸2_1960年の全国値は斎藤(1965)とほぼ同じで,2005年でもDIDの88.4%は平地(台地と低地等)にある。しかしこの間に丘陵地のDID面積は7.5倍,対全体比も急拡大し,山地等とあわせると11.6%である。_丸3_3大都市圏と4つの地方中枢都市圏(各中心駅からある半径内を機械的に設定,半径は表に示す)では,丘陵地+山地等の割合は札幌と東京を除いて全国と同等以上で,とくに仙台,広島で高く30%を超える。東京でも丘陵地への展開は急で,2005年の同面積は札幌や福岡の全DIDに匹敵する。高度経済成長期以降,日本の都市とくに主要大都市圏において,傾斜地やその改変地への都市域展開が普遍化したといえる。_丸4_一方で,全国のDIDのうち低地埋立地等はいまも約6割を占め,実面積は拡大している。丘陵地等改変地だけでなく低地等でも土地条件に応じた自然災害リスクは蓄積されている。

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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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