日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S1801
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シンポジウム アジアにおける近代初期の地理資料発掘・利用による環境変化研究:趣旨説明
松本 淳*小林 茂
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抄録

 地球環境の変動がグローバル・イシューになりながらも、なお不確定な要素がつきまとうひとつの原因は、本格的な器機による観測の期間が短く、しかも空間的に不均等という点に求められる。とくにアジア地域の場合、各種の観測の体制化が遅れ、長期的な観測記録が少なく、環境変化といっても、検討する時期をさかのぼらせることは容易ではない。
 これに関連してもうひとつ考慮すべきは、アジア地域の環境に関連する観測資料が、必ずしも充分に利用されているわけではない、という点である。たとえば気象観測は、中国においてはイエズス会士によって開始されたが、その資料の本格的集成は、近年になってようやく始められたところである。日本についても、長崎の出島におけるオランダ人の気象観測資料(在オランダ王立気象研究所など)の収集と検討などが開始されたが、さらなる努力が要請されている。このような利用されていない環境変化に関連する資料は、視野を広げてみると、さまざまな方面で認められ、その発掘と整備が各方面で行われつつある。本シンポジウムでは、こうした研究の進行を紹介し経験や知見、問題点を交換するだけでなく、今後のデータ整備に向けて、どのような作業が必要か、考えることを目的としている。発掘から利用まで、この種の資料に関する問題に多面的にアプローチしたい。

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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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