日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 102
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那覇市の介護サービス業に従事する女性の仕事と生活
*加茂 浩靖
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抄録

 沖縄県の地域的特徴の一つは雇用機会の乏しさであり,2008年における女性の完全失業率は全国のほぼ2倍に相当する6.2_%_を示す。それゆえ,近年における老人介護サービス業での労働力需要の増加は,この地域の女性の就業と生活の変化を探るうえで注目される。働く女性の増加にともない仕事と家事・育児という二重の役割を遂行する女性が増え,家庭内性別分業や子育て支援等の検討すべき課題が生じていると考えられるからである。本研究の目的は,介護サービス業における雇用増加に着目し,実態調査の結果にもとづいて沖縄県における女性の就業と生活の状況を把握することである。
 研究資料を得るため,本研究では那覇市に立地する介護サービス事業所での聞き取り調査,その女性従業者に対するアンケート調査を実施した。アンケート調査では223人から回答を得た。
 高齢化の進展や介護保険制度の導入にしたがい,沖縄県では介護サービス事業所の立地,女性従業者の雇用が増加した。事業所・企業統計調査によると,2001年~2006年の期間に,老人福祉・介護事業の事業所が214から522へと増加し,その女性従業者が4,776人から8,704人へと3,928人(82_%_)も増加した。
 介護サービス業における労働力需要の増大は,女性の社会進出を促進するとともに,家計収入の増加をもたらした。「就業によって変化したことは何か」という質問に対し,社会参加の充実感と回答した者が38_%_,経済的なゆとりと回答した者が31_%_である。その一方で,就業によって生じる悩み等の諸問題が発生していることにも注意を要する。同じ質問に対する回答として,時間的なゆとりの減少が32_%_,人間関係の悩みが増えたが30_%_に及ぶ。
 既婚女性が就業する上での大きな課題は仕事と家事の両立である。沖縄県では老人福祉・介護事業従業者の72_%_を女性が占めるものの,女性雇用に配慮した福利厚生を行う事業所は多くない。この原因は,資金不足や求人に対する応募が比較的多いこと等である。自家用車通勤が多い地域であるため,駐車場を用意する事業所は多い。しかしながら,託児施設の設置など育児支援を行う事業所はわずかであった。保育の必要な子を持つ回答者26人をみると,勤務中に子供を預ける相手として認可保育所が19人,無認可保育所が7人,祖父母が0人と,全てが外部の保育サービスを利用していた。
 また,家庭内での役割分担も女性が就業する上で重要な課題である。夫がいる回答者104人のなかで,夫が全く家事をしないと回答した者は30人(29_%_),この30人を含め夫の家事分担が20_%_以下の回答者は80人である。さらに,親と同居する親族世帯の回答者であっても,18人中15人が家事の50_%_以上を自身が負担していて,家事の大部分を担いながら就業している実態がみて取れる。
 以上,雇用機会が相対的に少ない沖縄県では,介護サービス業において労働力需要が増大し,女性に雇用や収入の機会の拡大をもたらした。その一方で,仕事と生活における二重の責務の増加に直面する女性が存在することも看過できない。雇用機会が拡大する中で,この地域に解決が求められる課題の1つは,働く女性を取りまく状況の改善といえる。

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