日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 211
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新聞広告の趨勢と地理的ターゲティングの効用
*福井 一喜
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抄録

1 広告活動における新聞広告を規定する要因
<趨勢>
新聞広告はさまざまな広告媒体の中で長期にわたって重要な地位を占めてきた。しかし,現在では新聞広告はもはや広告活動の中心ではなく,かつてはテレビ広告、近年ではインターネット広告などが次第に重要性を増している。その背景には,文字情報から画像・音声・映像情報への情報媒体の多様化,社会経済の成熟化にともなう生活者のライフスタイルの変化,広告媒体ごとの棲み分けと機能分担などの要因がある。

<仮説>
こうした状況の変化を踏まえると,新聞広告は他の広告媒体に対して比較劣位の立場に追い込まれてきた。新聞広告は高度経済成長期における大量消費を前提とした,画一的な情報発信の手段として優位性を発揮してきたからだ。
そこで,新聞広告における広告活動は,情報を受容する社会集団と地域を明確化してターゲットを絞りこむことで,よりいっそうの効率化が図れるのではないかという仮説を立てた。本研究では,その実態分析を通して仮説の成否について検証を試みた。

2 検証(新聞広告の趨勢)
<検証の方法>
調査対象は次の3つである。
1.全国紙の代表例として「読売新聞」(東京本社版)
2.地方紙の代表例として「徳島新聞」
3.全国紙地域面の代表として「読売新聞地域面」(東京版地域面)
広告内容の変化傾向を観るために,全国紙と地域面については1989年から5年ごとに,地方紙については2009年下半期を調査対象とした。調査方法としては,それぞれの新聞紙面について,1.広告面積を算定し,2.広告主の業種別比率をそれぞれ比較した。

<調査結果>
本調査によって明らかになったのは,以下の諸点である。
(1)業種別
全国紙においては,新聞社やそのグループ企業による広告や,通信販売、旅行会社の広告が増加傾向をみせたのに対して,自動車や不動産,コンピューター,インターネットなどの広告が減少傾向をみせた。地方紙や地域面においても,全国紙に類似した業種割合を見せる部分があった。しかし,農協や地元のホテル,展示会や家電量販店,さらには美容室などのように,全国紙よりも地域に密着する性格の業種も多かった。
(2)新聞別
全国紙においては,1.広告媒体としての地位・価値が低下している 2.高齢者や低所得者向けの広告が多い ということが明らかになった。地方紙・地域面においては,1.広告に投下した資本を短期に回収する広告が多い 2.広告主の多くが地元の事業者 3.消費者の購買行動に直結する広告が多い 4.阿波踊りと大きくコラボレーションした広告展開が行われていた ということが明らかになった。
(3)総合して
地方紙や地域面においては,広告主から求められていることとして 1.広告に投下した資本の短期回収 2.広告効果が目に見えて分かること があるとわかった。さらに,広告主が想定している広告対象は,新聞ごとに細分化していることがわかった。今後の地方紙・地域面の広告は,画一的な情報の大量発信から,細分化した広告対象の属性にあわせて情報を配信するターゲティングへ転換することで,再生を図ることができる。


3結果(これからの新聞広告の方向性) 地方紙や地域面においては,地理的ターゲティングによって広告活動を効率化できるという仮説が成り立つことを実証できた。
今後の地方紙や地域面においては 1.一般消費者向けに 2.具体的な商品情報を掲載し 3.投下資本を短期で回収する セールス・プロモーション的な広告媒体としての価値を成長させるべきである。これにより地域的ターゲティングを有効に機能させ,地方紙や地域面でより効率的な広告活動を実現できるだろう。
一方で全国紙の前途は非常に厳しいものになることが改めて予想できる。今後はパブリック・リレーションズ的な広告媒体としての価値をどこまで構築できるかが問題となるだろう。

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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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