日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 212
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地方開催型見本市における企業・組織間の関係構築
諏訪圏工業メッセを事例として
*與倉 豊
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抄録

_I_ はじめに
 近年,産業集積内における見本市,勉強会,研究会などへの参加が,企業・組織の知識創造における重要なチャネルとして注目されている.既存研究では短期的な出張や,専門的会議,イベントなどでの暫定的な対面接触によって,定常的クラスターと同等の知識・情報を獲得できると指摘する.見本市やコンファレンスなどのような,1つの目的の下で非日常的に主体が集合する経済的現象は,暫定的クラスターと表現されている.
 本研究では地方開催型の最大規模の見本市として注目を集めている長野県の「諏訪圏工業メッセ」を事例として,出展企業の見本市参加の目的や,新規の企業・組織間関係の構築状況について検討した.

_II_ 分析対象地域
本研究で対象とする長野県諏訪広域市町村圏(以降,諏訪地域と略す)は岡谷市,諏訪市,茅野市,下諏訪町,富士見町,原村の3市2町1村から成る.諏訪地域の製造業は機械系工業が中心であり,特に精密機械におけるエレクトロニクス化の進展によって,近年は電気機械器具(電子部品・デバイスおよび情報通信機械器具)へと中心的業種が変化している.事業所・企業統計調査によると,1981年から2006年までに製造業全体の事業所数・従業員数の規模は3割減となっている.

_III_ 諏訪圏工業メッセ
 2002年10月に諏訪地域の4商工会議所,2商工会が中心となって,高度技術が集積した「SUWA」ブランドを構築し,諏訪地域を総合的に全国へ発信することを目標とした諏訪圏工業メッセが開催された.初回の出展企業数は174社,延べ来場者数は12,000人であったが,毎年開催ごとに参加規模は拡大傾向にあり,2009年には252の企業・団体が出展し,延べ来場者数はおよそ24,000人で,初回の水準から倍増している(日刊工業新聞 2003年5月13日付; 信濃毎日新聞 2009年10月18日付).

_IV_ 出展企業の分析
2009年度諏訪圏工業メッセの出展社リストとNPO諏訪圏ものづくり推進機構が運営するウェブサイト「諏訪圏企業ガイド」などを基に,出展企業・団体の所在地,資本金,従業員数,創業年を調査した.
諏訪圏工業メッセでは出展企業が(1)加工技術,(2)機械・完成品,(3)産学・研究,(4)ソリューションなどのテーマ分野別に分けられている.図1は2009年度のテーマ分野別の出展企業・団体の地理的分布の割合を示している.諏訪地域の企業が出展の中心であり,長野県以外の企業・団体の出展は全体の6%を占めるに過ぎない.一方,大学や工業高等学校,公設試験研究機関などが含まれる「産学・研究」では,計22の団体・部署が19ブースを設置しているが,諏訪地域内からの出展割合よりも諏訪地域外からの出展割合の方が大きい.山梨大学や芝浦工業大学,中部大学など県外の大学などが出展しており,諏訪地域の加工技術を求めて来訪したバイヤーとの広域的な産学連携の構築がなされうる.
 当日の発表では,諏訪圏工業メッセの実行委員会のメンバーが中心となり設立されたNPO法人による産産・産学連携に関する活動内容や,出展企業の新規取引の達成状況などについて,聞き取り調査と資料分析結果を基に説明する.

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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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