日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 215
会議情報

日本におけるはくさいの地域間価格差とその変動
*中川 恵理子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.研究の背景・意義
 近年、食料品・農産物流通の国境を越えた広域化や流通経路の多様化が進んでいる。また、外食産業、加工産業の拡大と大規模量販店の拡大が食料品の生産と流通を消費側から規定する力を持ちつつあるといわれている。
 こうした状況の中で、地理学の分野でも食料の生産、流通、消費を包括的にとらえようとするフードシステム研究が増加している。これらの研究には、流通ルートの変容が地域間価格差を変容させるという指摘が散見される。しかし、その分析内容は、個別の地域や企業に注目したものが多く、時系列的な数量データを用いて価格差の程度や空間パターンを定量的に検討した研究はほとんど存在しない。
 そこで、本研究では、特にはくさいの卸売市場間流通と地域間の価格分布に注目し、1966年から2007年までのマクロな変化を追ったうえで、近年のはくさいの地域間価格差を規定する要因を検討した。はくさいに注目する理由として、生鮮はくさいの自給率がほぼ100%であり、輸入品の影響がほとんどないこと、産地の集中度が他の指定野菜14品目の中でも特に高く 、産地から消費地までの距離を算出しやすいことが挙げられる。

2.研究の目的と方法
 本研究の目的は、卸売価格と小売価格の空間パターンの時系列的変化とその規定要因を検討することである。そのために、まず、1966年から2009年までの47都道府県の県庁所在地における小売価格の年平均小売価格と、全国89の卸売市場における年平均卸売価格の地理的分布を描き、その特徴と変遷を考察した。また、価格の変動係数の時系列的変化とその要因を検討した。

3.現段階における分析結果
 1966年から2009年にかけて、小売価格の地域間格差は年次間の変動がみられるものの、おおまかに、価格が平準化される年、西高東低の様相を表す年とその逆になる年の3種類に分類される。
累年データの変動係数をみると、はくさいの地域間価格差は、緩やかに平準化されてきている。ただし、沖縄が日本へ返還された1973年直後と、1980年代初頭に急激に変動係数の値が上昇した時点が存在する。
 卸売数量と卸売価格の関係には、卸売数量の多い市場ほど全国平均価格 に近い価格での取引が多いという傾向がみられる。特に、突出して取扱規模が大きい東京の市場では平均価格に極めて近い値で取引が行われている。これは、規模の大きな市場がプライスリーダーシップを発揮している可能性を示唆している。
 本発表では、さらに、このような小売または卸売価格の空間パターンが生まれる要因の特定を試みたい。具体的には、需給変動、転送ネットワークと価格の分布の関係を検討する。

著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top