日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 217
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棚田荒廃後における集落組織主体の水田放牧
東広島市西条町福成寺を事例として
*神田 竜也
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抄録

 福成寺集落の水田放牧地(7.6ha)は、集落協定対象地および法人への利用権設定地であった。法人では放牧による農地管理を主たる目的とするため、水田(水稲作付)は個人管理である。法人所有の繁殖成牛7頭は、集落の東西2牧区を中心に放牧されている。水田放牧の推進力としては、会長や飼養管理担当の働きかけが重要であった。法人では、放牧に関する集会を月1回開催し、これは集落の会合と連動して実施されている。放牧を中心にすえた農地管理の共同実施は、従来の集落営農とは異なり、人口の少ない地域でも対応可能であることを示唆している。本事例において集落維持には、池や道路管理に参加する非居住者の存在が大きく、あわせて放牧による農地管理も同様の状況である。したがって、放牧は地域自治の範囲まで及んだ取り組みといえる。一方、新規参入による集落型放牧では、放牧開始初期の収入が不安定となるので、いかに資金調達できるかが重要となる。また、実施主体がのちに資金を稼ぐ見通しをおかないと、存続はいたって困難となるだろう。飼養管理においては、現在の担当者に替わる人員の確保がのぞまれる。従来では、肉用牛放牧がイノシシの獣害防止に役立つとの報告がみられるが、本事例では必ずしもそうではないことが明らかとなった。現時点では仮説の域を脱していないが、周囲の土地の荒廃状況や生息状況なども関連していると考えられる。以上の問題はあるものの、棚田荒廃後の保全管理、とくに団地化した耕作放棄地の面的な管理に対して放牧が有効であるといえる。今後は、中山間地域における粗放管理と集約的な管理との土地利用の組み合わせを考えていく必要があろう。

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