日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 103
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沖縄県におけるひとり親世帯の就業・保育・住宅問題
*久保 倫子由井 義通若林 芳樹久木元 美琴
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抄録

1.研究課題
 離婚は住宅問題と深く結びついており(Mulder, 2006),離婚を機に賃貸住宅や生家への転居を余儀なくされる傾向がある(Feijten and van Ham, 2010)。また,基本的な生活水準を維持するための負担が大きくなることや, 子の養育に関わる時間・資金的負担が親権者に偏りがちであるなどの多様な生活問題が浮上する(Del Boca, 2003)。世帯の多様化や不安定さが顕著になっている昨今,ひとり親世帯の生活空間および諸問題を分析しその課題を検討することは社会的意義が大きい。本研究は、ひとり親世帯の生活問題を就業,子育て,住宅という視点から分析する。なお,ひとり親世帯は,母子・父子世帯および寡婦を指すが,出現率の高い母子世帯を主として扱う。 本研究は,ひとり親世帯の就業と生活,保育に関する状況を明らかにすることを目的とし,「ひとり親世帯実態調査報告書」の経年的分析と,沖縄県および那覇市の母子寡婦福祉会の協力を得て,ひとり親世帯の生活に関するアンケートおよびインタビュー調査を行った。

2.沖縄県におけるひとり親世帯の生活と諸問題
 「平成20年度 沖縄県ひとり親世帯実態調査報告書(沖縄県)」によると,母子世帯の約20%は未就学児を抱え,約80%は養育費を得ておらず,約9%は収入がなく,約36%が5~10万円/月で生活をしていた。2005年国勢調査によると,ひとり親世帯(核家族世帯-{夫婦のみ・夫婦+子世帯})は民営借家地区に多く分布し(図),必ずしも離婚後に実家で同居するとは限らない。両親の保育サポートに頼れない,保育園への入園ができず求職活動に不利になるなどの保育問題に直面する女性も確認された。また,資格取得の機会を持たずに母子世帯となった女性は,就業機会を得にくい状況に陥っていた。 本研究は科研費補助金(基盤研究(B))「労働力の女性化がもたらす女性の就業と生活への影響に関する研究」(課題番号20300295,研究代表者:由井義通)の一部を使用した

3.参考文献
Del Boca, D. 2003. Mothers, fathers and children after divorce: The role of institutions. Journal of Population Economics, 16:399-422. Feijten, P., and van Ham, M. 2010. The impact of splitting up and divorce on housing careers in the UK. Housing Studies, 25:483-507. Mulder, C.H. 2006. Population and housing. Demographic Research, 15:401-412.

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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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