日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P803
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猪苗代湖および集水域の水環境に関する地理学的研究(2)
-2009年4月~2010年3月の観測結果から-
*都筑 俊樹小寺 浩二
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抄録
I はじめに
 日本で4番目に大きい福島県の猪苗代湖は、日本の大規模湖沼の中では水質が良く、透明度も高いことで有名で、古くから良好な水環境を保ってきたが、近年は中性化や水質悪化が問題となっている。最近では様々な地域での水環境変化が問題とされているが、猪苗代湖もその例外ではない。そこで湖沼と集水域の長期的な水環境変化について、様々な水環境情報を整理して明確にし、最近の水質を継続観測することで、現状の問題点を明確にし、水環境改善のための対策の指針を示したい。

II 研究方法
 すでに暖侯期の水質季節変動と流域の自然特性については報告した(小寺ほか,2009)が、本研究では、その後の観測結果も含めて、2009年4月から2010年3月にかけての1年間の現地観測結果から、猪苗代湖および集水域における水質の年間変動を明らかにする。  暖候期と同様の調査項目・分析項目を継続したが、集水域全体の水環境を明らかにするため、1月からは、長瀬川上流域の観測地点も加えた。

III 結果と考察
(1)集水域河川
流入河川においては、湖北東部の河川でECやCODが高く、湖水水質への負荷・影響が年間を通じて大きいことが示唆された。暖侯期では水質変動の激しかった酸性河川の長瀬川だったが、寒侯期では比較的水質変動は小さく、水質変動が大きいのは取水量の多い暖侯期に強く見られる現象であることがわかった。また、水位が高いときには普段停滞している河川も停滞が解消されるなど、河川状況は猪苗代湖の水位に強く左右されることもわかった。
(2)猪苗代湖
猪苗代湖の水温鉛直プロファイルの変化を見ると、大規模大深度湖沼の特性が明らかであるが、全循環期は2009年12月5日から翌1月9日までの間に訪れており、その時期が、比較的遅いことがわかった。また、南北・東西の水温・水質断面図からは、湖岸域で若干の違いはあるものの、水平方向には一様の分布が広範囲に見られ、湖流による混合が示唆された。春先の北部の低温水、夏の南部の高温水の分布は、それぞれ、磐梯山の伏流水、南域流入河川の影響と考えられる。

IV おわりに
 年間を通じての観測により、猪苗代湖集水域河川の水質季節変動と湖水の循環システムが明確になった。ただし、猪苗代湖の水質に最も大きな影響を与える長瀬川の流量と水質変化に関しては、月1回程度の観測では不十分で、さらに詳細な観測やデータ解析が必要である。  調査方法を練り直し、湖水中性化問題の核心に迫りたい。

参 考 文 献
小寺浩二・都筑俊樹(2009):猪苗代湖および集水域の水環境に関する地理学的研究(1)-水質の長期変動と2009年暖候期の現地観測結果から-,2009年度日本地理学会秋季学術大会発表要旨集.
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