日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P806
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デジタルカメラ撮影に基づく視程観測
*倉茂 好匡福澤 佑亮
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抄録

1. はじめに
 大気の澄み具合を表す指標に視程がある。旧来の研究に使用された視程の観測値は、目視によるものであり、しかも15 kmや40 kmなど5 kmきざみでしか表示されない。すなわち、視程の観測値には、かなり大きな誤差を伴っている。
 本研究では、デジタルカメラを用いて撮影した画像から山と空のコントラストを求め、これから視程を一意値として算出する方法を考察した。

2. 調査方法
 観測は2009年5月29日から2009年12月22日まで、午前8時と午前9時に行った。観測地点は滋賀県立大学B5棟3階ベランダである。観測地点の南南西方向にある、荒神山(観測地点より3.1 km)、和田山(9.7 km)、きぬがさ山(13.4 km)、箕作山(14.4 km)を観測目標とした。

3. 視程の算出
 画像解析には、Adobe Photoshop 5.5を使用し、この画面上で目標の明るさを測定した。まず、撮影画像をグレースケール(白黒)に変換し、0~255の数値で画素の明るさを表示した。
 グレースケール化した画像上で、目標のひとつである荒神山の明るさと、荒神山上空の空の明るさを測定した。
 いま、目標の明るさB、その上空の明るさをBsとすると、コシュミーダーの式より消散係数σが次式で求まる。

σX=ln{Bs(Bs-B)}        (1)

ただし、Xは観測点から目標の距離、単位はkmである。
 次に、(1)式で求めたσを用いると、視程V (km)は次式で与えられる。

V=(1/σ) ln|1/ε|             (2)

ただし、εは対比識別限界値であり、0.02で与えられる。

4. 算出視程の精度
 算出した視程距離(以降、算出視程と称す)が、撮影画像を目視して求まる視程距離(以降、目視程と称す)と矛盾しないか否か検討した。例えば、算出視程が10.0 kmのとき画像上で、きぬがさ山(距離13.4km)は視認できないが、和田山(9.7 km)は視認できるのなら、目視程は9.7 km以上、13.4 km未満である。このとき、算出視程は、この目視程の範囲入っているので、この場合は「矛盾しない」と判断した。一方、目視程がこの範囲であるにもかかわらず、算出視程が14.4 km以上の場合は「過大評価」、算出視程が9.7 km未満の場合は「過小評価」のように判断した。

5. 結果
 算出視程が14.4 km以内の画像を、上記のように確認した。午前8時は、37日中「矛盾なし」が16日、「過大評価」が11日、「過小評価」が12日となった。午前9時は、40日中「矛盾なし」が18日、「過大評価」が7日、「過小評価」が18日となった。
 また、14.4kmより大きい算出視程の「過大評価」または「過小評価」は、午前8時で、「過大評価」2日、午前9時で「過大評価」4日となった。午前8時、9時共に14.4 kmより大きい算出視程での「過小評価」は見られなかった。
 今後、これらの矛盾の原因について、気象要素より考察をする予定である。

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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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