日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 221
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モンスーンの将来予測と古気候モデリングの接点
*植田 宏昭
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抄録

本研究では、PMIPのプロトコルに従い、MRI-CGCM 2.3.2を用いて、地球軌道要素(離心率、歳差、黄道傾斜)、温室効果ガス濃度(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素)、大陸氷床を変化させることにより、LGMにおけるアジアモンスーンの季節進行の特徴を調べた。更に、軌道要素の違いによる効果、氷床効果、SSTの効果を分離するために、各種の感度実験を行なった。  LGMのモンスーンは現在と比べ、プレモンスーン期の降水が多く、オンセットが早い。一方、夏季モンスーンの循環と降水は抑制傾向にあり、季節的な非対称性を呈している。 プレモンスーン期の対流圏中上層の南北の気温勾配(通称MTG: Meridional Temperature Gradient)に着目すると、プレモンスーン期には、夏のモンスーンを特徴付ける南低北高温度勾配が更に強化されている。この理由は、(i)熱帯における降水量の減少により、凝結熱加熱量が低下し、結果として熱帯の気温が低下すること、(ii)北半球の冬から春にかけて、軌道要素の変化に起因して、現在よりも多くの日射がアジア大陸上に降り注ぐことに起因している。一方、夏季モンスーン期には、大陸氷床が残っているため、大陸上の低温偏差は継続する。この低温偏差は、熱帯域の気温低下と釣り合うため、温度勾配は現在とほぼ同じになっている。

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