日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 205
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北部ベトナムにおける冬季の日照時間の年々変動
*平野 淳平松本 淳
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抄録

?Tはじめに
北部ベトナムや中国南部では冬に日照時間が少なく, 曇りがちの天候が卓越する。この原因として, シベリア高気圧からの寒気の影響が指摘されている(中田1991)。しかし,この地域における冬の天候の年々変動と大気循環場との関係についてはほとんど研究されていない。この地域における冬の天候は, 農業など人間活動に対して大きな影響を及ぼしており, その年々変動とメカニズムを解明することは重要である。本研究は北部ベトナムにおける1961~2000年の月平均日照時間データを使用し, 冬の日照時間の年々変動と循環場との関係を明らかにすることを目的としている。 

?Uデータと方法
ベトナム水文気象局より入手した北部ベトナム6地点における1961~2000年の12月、1月、2月の月平均日照時間データを使用した。6地点で平均した各月の日照時間データにもとづいて, 月平均日照時間が+1σ以上の年を多照年,-1σ以下の年を寡照年と定義した。その上で, 多照年と寡少年についてヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)のERA40客観解析データを使用し, 海面更正気圧(SLP)のコンポジット図を作成して,多照年と寡照年における循環場の特徴について考察した(図1). 

?V結果
 
図1に示すように, 多照年に共通する特徴として中国南部からインドシナ半島付近で高気圧偏差が強いことが指摘できる。この高気圧偏差は特に12月と1月に明瞭である。多照年には北部ベトナムはこの高気圧偏差域に覆われるため,多照となると考えられる。一方,寡照年についてはユーラシア大陸北部でのシベリア高気圧の発達がみられる。アジア域ではシベリア高気圧から南東方向へ高気圧偏差域が伸びている様子がみられる。特に1月の場合,シベリア高気圧が東方への張り出しが顕著である。この華南付近に伸びる高気圧偏差域の西側には弱い低気圧偏差域が存在している。これらの結果は中国南部から北部インドシナ付近において東西方向の気圧差が増大した際に,北部ベトナムでは寡照となることを示唆している。今後,多照年と寡照年について偏西風の状態や上層の循環場の特徴についても検討を進めてゆく予定である。

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