日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 522
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ジオパークに対する観光客のイメージ
*深見 聡有馬 貴之
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抄録

1.はじめに
わが国におけるジオパークと観光振興に関する研究は、日本ジオパークネットワークが組織され、2009年に島原半島など3つの世界ジオパークの認定がなされたことを契機に注目を集めつつある。その際、ジオツーリズムと呼ばれる観光振興の方法は、たとえば歴史観光や産業観光などとは異なる「地学・自然地理学」といった理科的な地域特性が前面に存在する点を踏まえて、「大地の遺産」を観光客に紹介できるかが重要である。ジオパークによる観光振興(ジオツーリズム)に関する地域での取り組みもなされるようになり、オンサイトツーリズムの1つとして期待する声も高まっている。
 一方で、ジオパークには一種独特の「難しさ」の存在を実感することがある。報道においても、世界ジオパークと似た仕組みでユネスコが関与する世界遺産にくらべジオパークやジオツーリズムの名前は一般に著しく知名度に欠ける点が指摘されている。そもそも社会的に地学・自然地理学に対する関心が低いためジオパークそのものへの視点が向かいにくいのではという疑問も同時に生じる。わが国におけるジオパークの議論は、まさにこれからが正念場といえよう。
 そこで本稿では、ジオパークとは何かについて改めて整理していく基盤的データを得るべく、ジオパークと観光振興に関するアンケート調査を九州にある4か所のジオパーク(島原・天草御所浦・阿蘇・霧島)で実施した結果を速報的に公表するものである。その結果から、今後のジオパークの展開において求められる地域での役割は何なのか考えてみたい。
2.アンケート調査の概要
 2010年11月から12月にかけて、上掲4か所のジオパークにあるコア施設(博物館・景勝地など)において観光客をおもな対象者に定めて回答を直接依頼し、各100部ずつ回収した。ジオパークの認知度や、地域経済の活性化といった、質問項目に対して選択式による回答を得、集計と地域間における差の検定をおこなった。
3.アンケート調査の結果
 本稿では、紙幅の都合上、その一部を公表する。
・ジオパークの認知度・・・地域間の差はみられず。「聞いたことがない」は全体で37%。
・「日本ジオパーク認定」の知名度・・・地域間に差がみられた。特に、天草御所浦の「聞いたことがある」(40%)が4地域で最高、「聞いたことがない」(60%)が最低。反対に阿蘇は「聞いたことがある」(16%)が4地域で最低、「聞いたことがない」(84%)が最高となった。
・「ジオパーク」への興味・・・地域間に差がみられた。特に、島原は「そう思う」「かなりそう思う」を合わせて65%と最高、最低は阿蘇の40%となった。
・「ジオパーク」の活動への参加意欲・・・地域間に差がみられた。特に、島原は「そう思う」「かなりそう思う」を合わせて40%と最高、一方、阿蘇は「どちらでもない」が55%と4地域間で最高となった。
・「ジオパーク」の活動に参加したくない理由・・・地域間に差はみられず。「そもそも何なのか分からない」は全体で70%弱、次いで「興味・関心がない」「どうすればよいのか分からない」が各々20%超となった。
・「ジオパーク」と地域の持続的発展の関連・・・地域間に差はみられず。全体で、「かなりそう思う」「ある程度そう思う」を合わせて66%、「あまりそう思わない」「全くそう思わない」は合わせて7%であった。
・「ジオパーク」のイメージ・・・地域間に差がみられない項目のうち、「楽しい」「感動する」「環境にやさしい」で高い評価がなされていた。
・「ジオパーク」で経験したいもの・・・「歴史的遺産」「郷土料理・地産地消」は地域間に差がみられず、比較的高い割合を示した。「温泉・地熱」は天草御所浦を除く3地域で60~80%の高い割合、島原は「防災・減災」が唯一30%を超えた。
4.おわりに
 ジオパークのイメージは、いまだ明確に地域を訪れる観光客に浸透しているとは言い難い。ジオパークの知名度向上には、各ジオパークで高い割合を示した体験希望メニューを重点的に展開する等の工夫が求められる。その際、ジオサイトを学術的見地から評価する学識経験者、地域住民、地域外住民(NPOなどの地縁に依らない地域団体)、観光客、旅行業者、行政等が一同に集い、その精選をおこなう必要がある。
また、ジオパークやジオツーリズムのもつ理念を、すでに観光地としてにぎわいを見せている場所でわざわざ導入する意義はどこにあるのかを考えることも大切だ。今後、わが国においても世界ジオパーク、日本ジオパークをはじめ、日本ジオパークの次期認定の候補地である準会員(箱根など)、その有力な候補地であるオブザーバー(磐梯山など)の数は増加していくものと考えられる。地域に共通あるいは固有のニーズはどこにあるのか、継続して比較検討していく必要がある。

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