抄録
近年,ヨーロッパの多くのワイン生産地が,従来のブドウ栽培・ワイン醸造業に加え,ワインをテーマとした観光(エノツーリズム)に力を入れるようになっている。ワイナリー訪問がその中核を占めるなかで,新たな観光対象として注目されているのが,ブドウ畑の景観である。世界遺産条約への「文化的景観」の導入(1992年),ヨーロッパ景観条約の成立(2000年)などを背景に,ヨーロッパではブドウ畑の景観のもつ遺産的価値への関心が高まり,これを観光資源の一つとしてエノツーリズムに結びつけようとする取り組みが各地で行われている。 今回は,こうした新たなタイプのエノツーリズムの事例として,スペイン・カタルーニャ自治州パナデスを取り上げ,とくにブドウ畑の景観を観光に活かす一つの試みとして,ハイキング・ルートの設定に焦点を当てて報告を行う。