日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 116
会議情報

発表要旨
流木による堰上げで生じた2009年佐用水害の実態
*小玉 芳敬河本 悠佑
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

2009年8月に兵庫県播磨北西部を中心に集中豪雨が発生した。9日午後8時~9時には激しい豪雨となり,佐用川の水位が急激に上昇して氾濫をおこした。約1年後に聞き取り調査および現地測量調査を実施して,佐用水害の実態を明らかにした。その結果,洪水氾濫を激化させた要因は,橋梁にひっかかった流木による洪水流の堰上げにあることが判明した。なかでも山脇鉄橋は,佐用川を斜めに横断していることから,河道内に橋脚が6本もあり水流に対する抵抗が大きく,効率的に堰上げが生じ,洪水流が堤防を越え長時間にわたり流れ出たと考えられる。この地点の氾濫水は最大水深1.8mを記録した。堰上げ部分より上流側では河川水位は堤防を越えていなかった。つまり,流木による堰上げがなければ,佐用町の多くの地域で氾濫被害を免れた可能性が残る。なお,2004年には極地風「広戸風」による倒木被害がこの地域で発生した。倒木の一部は玉切りにされ,搬出段階にあった。2004年の広戸風による倒木被害と,2009年の佐用水害の関連性は,今後に残され課題である。いずれにしても流木の供給源対策や橋などの構造を見直すことが,減災・被害未然防止を考えるうえで重要となろう。

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top