日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1117
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発表要旨
石狩平野内陸部の沖積層
*堀 和明伊藤 彩奈田辺 晋中西 利典洪 完
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キーワード: 氾濫原, 泥炭, 石狩川, 完新世
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抄録

沖積低地の自然堤防-後背湿地帯(氾濫原)では,河床勾配が緩やかなため,蛇行流路が発達しやすい.また,蛇行流路の屈曲が大きくなると,蛇行切断が生じ,放棄された旧流路は河跡湖(三日月湖)として残される.このような氾濫原は世界各地にみられるが,日本で代表的なものは石狩平野であろう.近年,石狩平野では,完新世の海進期にバリアー—ラグーンシステムが発達したと考えられる沿岸部を中心にオールコアボーリングが実施され,沖積層に関する知見が増えてきている.一方,これよりも上流側の氾濫原では,蛇行流路や泥炭地の変遷に関する研究はあるものの,現在みられる氾濫原がどのように発達してきたかについては不明な点が多く残されている.本研究では,氾濫原を構成する沖積層の累重がどのように起こってきたかを明らかにするために石狩平野内陸部で2本のボーリングコア堆積物を採取した.掘削したコア堆積物については,岩相の記載,湿潤・乾燥かさ密度,色調測定,軟エックス線写真撮影,放射性炭素年代測定をおこなった.コア堆積物には以下の特徴がみられた.1.最下部の1-2 mは亜円礫を主体とする砂礫層からなる.礫径は最大で4-5 cm程度となっている.2.最下部を除き,泥を主体とする細粒堆積物からなる.3.木片や植物片などの有機物を多く含み,乾燥かさ密度が1.0 g/cm3以下になる泥質な層準が,IK1では深度2.1-9.8 m,IK2では深度4.3-11.8 mに認められる.とくにIK1の深度2.1-6.3 mでは泥炭の堆積が顕著になる.最下部の砂礫層はIK1で10 cal kyr BP以前,IK2で22 cal kyr BP以前に堆積しており,沖積層基底礫層に相当すると考えられる.IK1では8-7 cal kyr BPにかけての堆積速度が,7 cal kyr BP以降に比べて大きい.IK2については7 cal kyr BP以前の堆積速度について不明な点があるものの,7 cal kyr BP以降についてはほぼIK1と同じような堆積速度を示している.この7 cal kyr BP頃は,前述した,木片や植物片などの有機物を多く含む泥質堆積物が堆積し始める頃にほぼ相当する.また,IK1において泥炭の堆積が顕著であった期間は年代値からみて5-1 cal kyr BP頃で,その堆積速度は1000年あたり約1 mと考えられる.

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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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